第三種電気主任技術者試験 / 令和8年度 上期 第3種 理論 / 各問題解説 / 問181
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令和8年度 上期 第3種 理論 問181 解説 問18(a)

設問図

小信号増幅回路の直流ベース電流 $I_B$[A] が抵抗 $R_A$, $R_E$ の直流電流 $I_E$[A] に比べて十分に小さいものとしたとき、コレクタ・エミッタ間の直流電圧 $V_{CE}$[V] の値として、最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

  1. (1) 6.4
  2. (2) 5.3 ✓ 正答
  3. (3) 4.5
  4. (4) 1.7
  5. (5) 1.1

解説

設問(a)は、トランジスタを用いた小信号増幅回路の直流動作点に関する問題です。与えられた条件「直流ベース電流 IBI_B が抵抗 RA,RCR_A, R_C の直流電流 IAI_A や ICI_C に比べて十分に小さいものとしたとき」を利用し、各部の直流電圧と電流を求めます。図1の分圧バイアス回路において、VCCV_{CC} からベースに接続された抵抗を RB=600 kΩR_B = 600 \text{ k}\Omega、ベースからグランドに接続された抵抗を RA=100 kΩR_A = 100 \text{ k}\Omega と解釈して計算を進めると、コレクターエミッタ間の直流電圧 VceV_{ce} は約 5.3 V5.3 \text{ V} となり、正答は(2)です。

直流動作点の決定に関する基礎知識

小信号増幅回路を解析する際、まずその直流動作点(クワイアセントポイント、Q点)を決定する必要があります。直流動作点は、入力信号が印加されていないときのトランジスタのコレクタ電流 ICI_C とコレクタ-エミッタ間電圧 VceV_{ce} の値を指し、増幅器が適切に動作するための基準となります。

直流動作点を解析する場合、回路図中のコンデンサは直流電流に対しては無限大の抵抗(開放状態)として扱います。これは、コンデンサが直流を阻止し、交流のみを通過させる性質を持つためです。したがって、本問のコンデンサ C1,C2,C3C_1, C_2, C_3 は、直流解析においては回路から取り除かれたものとして考えます。

この直流動作点を計算する際には、オームの法則とキルヒホッフの法則が基本的な道具となります。特に、回路内の各部の電圧と電流の関係を理解し、未知の値を既知の値から導き出すことが重要です。

本問で与えられている「直流ベース電流 IBI_B が抵抗 RA,RCR_A, R_C の直流電流 IAI_A や ICI_C に比べて十分に小さいものとしたとき」という条件は、トランジスタのベース電流 IBI_B が無視できるほど小さいと近似して良いことを意味します。この近似を用いることで、ベースバイアス回路の分圧電圧をより簡潔な分圧の法則で計算することが可能となり、回路解析が容易になります。

コレクターエミッタ間直流電圧 VceV_{ce} の算出ステップ

回路図(図1)の構成と与えられた条件に基づいて、VceV_{ce} を以下のステップで計算します。

  1. ベース電圧 VBV_B の計算 図1のトランジスタ回路は、直流電源電圧 VCCV_{CC} を抵抗 RAR_A と RBR_B で分圧してベースにバイアス電圧を供給しています。問題文では抵抗の値を RA=100 kΩR_A = 100 \text{ k}\Omega, RB=600 kΩR_B = 600 \text{ k}\Omega と記載していますが、図の配置と正答選択肢の結果を考慮すると、VCCV_{CC} からベースに接続された抵抗を RB=600 kΩR_B = 600 \text{ k}\Omega、ベースからグランドに接続された抵抗を RA=100 kΩR_A = 100 \text{ k}\Omega と解釈して計算を進めるのが適切です。 「直流ベース電流 IBI_B が十分に小さい」という条件から、ベース電流を無視できるため、ベース電圧 VBV_B は分圧の法則を用いて次のように計算できます。

    VB=VCC×RARA+RBV_B = V_{CC} \times \frac{R_A}{R_A + R_B} VB=12 V×100 kΩ100 kΩ+600 kΩ=12 V×100700=12×17≈1.7143 VV_B = 12 \text{ V} \times \frac{100 \text{ k}\Omega}{100 \text{ k}\Omega + 600 \text{ k}\Omega} = 12 \text{ V} \times \frac{100}{700} = 12 \times \frac{1}{7} \approx 1.7143 \text{ V}

  2. エミッタ電圧 VEV_E の計算 トランジスタのベース-エミッタ間には直流電圧 Vbe=0.6 VV_{be} = 0.6 \text{ V} が印加されています。エミッタ電圧 VEV_E は、ベース電圧 VBV_B からこの VbeV_{be} を差し引いた値になります。

    VE=VB−VbeV_E = V_B - V_{be} VE=1.7143 V−0.6 V=1.1143 VV_E = 1.7143 \text{ V} - 0.6 \text{ V} = 1.1143 \text{ V}

  3. エミッタ電流 IEI_E の計算 エミッタ電圧 VEV_E とエミッタ抵抗 RDR_D (=1 kΩ= 1 \text{ k}\Omega) が分かっているため、オームの法則を用いてエミッタ電流 IEI_E を計算します。

    IE=VERDI_E = \frac{V_E}{R_D} IE=1.1143 V1 kΩ=1.1143 mAI_E = \frac{1.1143 \text{ V}}{1 \text{ k}\Omega} = 1.1143 \text{ mA}

  4. コレクタ電流 ICI_C の計算 トランジスタの電流関係において、エミッタ電流 IEI_E はコレクタ電流 ICI_C とベース電流 IBI_B の和 (IE=IC+IBI_E = I_C + I_B) です。問題文の条件「IBI_B が ICI_C に比べて十分に小さい」より、IC≈IEI_C \approx I_E と近似できます。

    IC≈1.1143 mAI_C \approx 1.1143 \text{ mA}

  5. コレクタ電圧 VCV_C の計算 コレクタ電圧 VCV_C は、直流電源電圧 VCCV_{CC} からコレクタ抵抗 RCR_C (=5 kΩ= 5 \text{ k}\Omega) による電圧降下を差し引いた値です。

    VC=VCC−ICRCV_C = V_{CC} - I_C R_C VC=12 V−(1.1143 mA×5 kΩ)V_C = 12 \text{ V} - (1.1143 \text{ mA} \times 5 \text{ k}\Omega) VC=12 V−(1.1143×10−3 A×5×103Ω)V_C = 12 \text{ V} - (1.1143 \times 10^{-3} \text{ A} \times 5 \times 10^3 \Omega) VC=12 V−5.5715 V=6.4285 VV_C = 12 \text{ V} - 5.5715 \text{ V} = 6.4285 \text{ V}

  6. コレクターエミッタ間直流電圧 VceV_{ce} の計算 最後に、求めるコレクターエミッタ間直流電圧 VceV_{ce} は、コレクタ電圧 VCV_C からエミッタ電圧 VEV_E を引いた値です。

    Vce=VC−VEV_{ce} = V_C - V_E Vce=6.4285 V−1.1143 V=5.3142 VV_{ce} = 6.4285 \text{ V} - 1.1143 \text{ V} = 5.3142 \text{ V}

この計算結果を四捨五入すると 5.3 V5.3 \text{ V} となり、選択肢(2)と一致します。

各抵抗と電源電圧によって決まるベース電圧、そしてベース-エミッタ間電圧降下が、エミッタ電流とコレクタ電流にどのように影響するかを追い、最終的にコレクターエミッタ間の直流電圧 VceV_{ce} がどのように決まるのかを図の各点と重ねてみると、回路の直流動作点が明確に見えてきます。

参考リンク

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