令和8年度 上期 第3種 理論 問172 解説 問17(b)
図のような環状コイルがある。正弦波交流電源の電圧を E [V]、周波数を f [Hz] としたとき、鉄心中の最大磁束を Φm [Wb] であった。次 の (a) 及び (b) の問に答えよ。 ただし、鉄心の漏れ磁束は なく、鉄心の飽和やヒステリシスもないものとする。 したがって、初期状態での残留磁気は 0 とする。 (b) 電源の電圧を 3E [V] のまま、周波数を 2f [Hz] にしたとき、最大磁束 [Wb] は、Φm [Wb] の何倍になるか。その倍率として、最も近いものを次の (1) ~ (5) のうちから一つ選べ。
- 0.67
- 0.17 ✓ 正答
- 3.0
- 1.5
- 0.50
解説
問17(b)の環状コイルにおいて、電源の電圧を3倍、周波数を2倍にすると、ファラデーの電磁誘導の法則により決定される最大磁束は元の1.5倍となるため、選択肢の1.5が正答です。
コイルに発生する誘導起電力と最大磁束の関係
コイルに交流電圧を印加すると、コイルの鉄心中には交流磁束が発生します。この磁束が時間的に変化することで、コイルには誘導起電力が発生します。正弦波交流電圧が印加される理想的なコイルの場合、この誘導起電力の実効値と鉄心中の最大磁束の間には、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいた特定の関係が成り立ちます。
具体的には、交流電源の電圧実効値 [V]、周波数 [Hz]、コイルの巻数 [回]、鉄心中の最大磁束 [Wb] の間には、以下の「誘導起電力の式」(または「変圧器の起電力の式」)が成立します。
この式は、コイルに発生する誘導起電力の実効値 が、周波数 と最大磁束 に比例することを示しています。問題文には「鉄心の漏れ磁束はなく、鉄心の飽和やヒステリシスもない」とあり、これは上記の理想的な関係がそのまま適用できることを意味します。また、コイルの巻数 は環状コイルの物理的な形状で決まるため、電源の電圧や周波数が変化しても変わらない定数です。
この誘導起電力の式を、求めたい最大磁束 について整理すると、次のようになります。
この式から、最大磁束 は電圧実効値 に比例し、周波数 に反比例するという関係が明確にわかります。係数 と巻数 は定数であるため、磁束 の変化は と の変化のみに依存することになります。
設問の条件に基づく最大磁束の倍率の算出
上記の最大磁束と電圧、周波数の関係式を用いて、問題文の条件変更後の最大磁束を求め、元の最大磁束に対する倍率を算出します。
最初の状態における最大磁束の表現 問題文によると、最初の状態では電源の電圧実効値が [V]、周波数が [Hz] であり、このときの鉄心中の最大磁束を [Wb] としています。 先ほど整理した式を用いると、 と表すことができます。
条件変更後の状態の確認 問題(b)では、電源の電圧を [V] に変更し、周波数を [Hz] に変更しています。コイルの巻数 は変化しません。 この変更後の最大磁束を [Wb] とします。
条件変更後の最大磁束の算出 変更後の電圧 と周波数 を先の式に代入して、 を計算します。
この式を整理すると、定数部分と変化する部分を分離できます。
ここで、 の部分は、最初の状態での最大磁束 と同じです。
最大磁束の倍率の特定 したがって、変更後の最大磁束 は、最初の最大磁束 を用いて次のように表せます。
この結果から、電源の電圧を3倍にし、周波数を2倍にしたとき、鉄心中の最大磁束は元の1.5倍になることがわかります。
図に示された環状コイルの構造と、電源の電圧および周波数の変化を改めて見比べてみると、コイルの巻数が変わらないため、電圧実効値と周波数が最大磁束をどのように決定しているかが見えてきます。