令和8年度 上期 第3種 理論 問171 解説 問17(a)
図のような環状コイルがある。正弦波交流電源の電圧を E [V]、周波数を f [Hz] としたとき、鉄心中の最大磁束を Φm [Wb] であった。次 の (a) 及び (b) の問に答えよ。 ただし、鉄心の漏れ磁束は なく、鉄心の飽和やヒステリシスもないものとする。 したがって、初期状態での残留磁気は 0 とする。 (a) 電源の周波数 f [Hz] が一定で、電圧を 3E [V] にしたとき、最大磁束 [Wb] は、Φm [Wb] の何倍になるか。その倍率として、最も近いものを次の (1) ~ (5) のうちから一つ選べ。
- 1.0
- 0.11
- 0.33
- 3.0
- 9.0 ✓ 正答
解説
電源の周波数 が一定のまま、電圧を にしたとき、環状コイルの鉄心中の最大磁束 は3倍になります。これは、コイルに誘起される電圧の大きさが、磁束の時間変化率に比例するというファラデーの電磁誘導の法則に基づいているためです。
交流電圧と最大磁束の関係
環状コイルのような誘導性負荷に交流電圧を印加すると、コイル内では交流磁束が発生します。この磁束の時間変化によって、コイル自身に誘導起電力が発生します。この現象はファラデーの電磁誘導の法則によって説明されます。
ファラデーの電磁誘導の法則は、コイルに誘起される誘導起電力 が、コイルを貫く磁束 の時間変化率に比例し、その変化を妨げる方向に発生することを示します。コイルの巻数を とすると、 と表されます。ここで、交流電源の電圧が正弦波交流であり、鉄心の飽和やヒステリシスがないという問題文の条件から、磁束も正弦波状に変化すると仮定できます。
正弦波交流電圧がコイルに印加された場合、誘導起電力の実効値 と最大磁束 、周波数 、コイルの巻数 の間には、以下の関係式が成り立ちます。 この式は、変圧器の誘導起電力の式としてもよく知られています。ここで、 は定数であり、 から来ています。
この式から、コイルの巻数 が一定であれば、誘導起電力の実効値 は、周波数 と最大磁束 の積に比例することがわかります。
最大磁束の倍率を求める手順
この問題では、上記の法則を設問の条件に適用して、最大磁束の変化を特定します。
基本となる関係式の確認 環状コイルに正弦波交流電源の電圧が印加されたときの電圧実効値 と鉄心中の最大磁束 、周波数 の間には、次の関係式が成り立ちます。 ここで、 はコイルの巻数です。
変化しない定数の特定 設問(a)の条件では、「電源の周波数 が一定」とされています。また、コイルの巻数 は環状コイルの構造によって決まるため、電源電圧や周波数を変更してもその値は変わりません。さらに、 も物理定数です。 したがって、上記の式で , , はすべて一定の値と見なすことができます。
電圧と最大磁束の比例関係の導出 の式において、括弧内の が定数であるため、電圧実効値 は最大磁束 に直接比例するという関係が導き出されます。
電圧変更に伴う最大磁束の変化の計算 初期状態では、電圧 に対して最大磁束 でした。 設問の条件では、電圧を に変更しています。電圧と最大磁束が比例関係にあるため、電圧が3倍になれば、最大磁束も3倍になります。 新しい最大磁束を とすると、 よって、新しい最大磁束 は初期の最大磁束 の3倍になります。
この環状コイルの図と、入力電圧 そして鉄心中の最大磁束 の関係を重ねてみると、電圧の変化が磁束の大きさへ直接的に影響を与える様子が見えてきます。