令和8年度 上期 第3種 理論 問162 解説 問16(b)
問 16 最大目盛 150 V,内部抵抗 18 kΩ の直流電圧計 V_1 と最大目盛 300 V,内部抵抗 30 kΩ の直流電圧計 V_2 の二つの直流電圧計がある。ただし,二つの直流電圧計は直動式指示電気計器を使用し,固有誤差はないものとする。次の (a) 及び (b) の問に答えよ。(b) 次に,直流電圧 450 V の電圧を測定するために,二つの直流電圧計の指示を最大目盛にして測定したい。そのためには,直流電圧計 (ア) に,抵抗 (イ) kΩ を (ウ) に接続し,これに直流電圧計 (エ) を直列に接続する。このように接続して測定することで,各直流電圧計の指示を最大目盛にして測定をすることができる。上記の記述中の空白箇所 (ア)~(エ) に当てはまる組合せとして,正しいものを次の (1)~(5) のうちから一つ選べ。
- (1) V_1 90 直列 V_2
- (2) V_1 90 直列 V_1
- (3) V_2 90 並列 V_1
- (4) V_1 18 直列 V_2
- (5) V_2 18 直列 V_1 ✓ 正答
解説
直流電圧 450 V を、最大目盛 150 V の直流電圧計 V₁ と最大目盛 300 V の直流電圧計 V₂ をそれぞれ最大目盛で指示させながら測定するためには、V₁に 90 kΩ の抵抗を並列に接続し、これと V₂ を直列に接続する構成が正しく、選択肢(1)が正解です。この構成により、各電圧計に定格電圧が印加され、かつ両者に流れる電流が一致するようになります。
直流電圧計の基本原理と回路法則
この問題の理解には、直流電圧計の動作原理と、基本的な回路法則の理解が不可欠です。
直流電圧計の基本原理と最大目盛電流:
直流電圧計は、内部抵抗と直列に接続された指示電気計器(例えば可動コイル型計器)で構成されます。計器は内部抵抗に流れる電流によって針が振れ、その振れ幅を電圧値として表示します。最大目盛電圧を指示しているとき、計器の内部抵抗にはその電圧に対応する最大の電流(定格電流または最大目盛電流)が流れています。この最大目盛電流 Imax は、電圧計の最大目盛電圧 Vmax と内部抵抗 Ri を用いて、オームの法則 Imax=Vmax/Ri で計算できます。
直列回路における分圧の法則:
複数の抵抗を直列に接続した回路では、全ての抵抗に流れる電流は等しくなります。このとき、回路全体の電圧は各抵抗にかかる電圧の和となり、各抵抗にかかる電圧は抵抗値に比例して分圧されます。この関係を分圧の法則と呼びます。
並列回路における分流と合成抵抗:
複数の抵抗を並列に接続した回路では、全ての抵抗にかかる電圧は等しくなります。回路全体の電流は各抵抗に流れる電流の和となり、各抵抗に流れる電流は抵抗値の逆数に比例して分流します。並列に接続された抵抗全体の合成抵抗 R並列合成 は、個々の抵抗 R1,R2,… を用いて 1/R並列合成=1/R1+1/R2+… という関係で計算されます。
450 V 測定回路の構成判断
各電圧計の最大目盛電流を算出する
- 直流電圧計 V₁: 最大目盛 V1max=150 V、内部抵抗 RV1=18 kΩ。
V₁の最大目盛電流 IV1max=V1max/RV1=150 V/18 kΩ=150 V/(18×103 Ω)=1/120 A。
- 直流電圧計 V₂: 最大目盛 V2max=300 V、内部抵抗 RV2=30 kΩ。
V₂の最大目盛電流 IV2max=V2max/RV2=300 V/30 kΩ=300 V/(30×103 Ω)=1/100 A。
これらの結果から、IV2max=1/100 A=0.01 A であり、IV1max=1/120 A≈0.00833 A なので、V₂の最大目盛電流の方がV₁より大きいことが分かります。
V₁とV₂を最大目盛で直列接続する場合の検討
直流電圧 450 V を測定するために V₁ (最大 150 V) と V₂ (最大 300 V) をそれぞれ最大目盛で指示させたい場合、V₁に 150 V、V₂に 300 V が印加されるように直列に接続するのが自然な発想です。このとき、V₁とV₂の合計電圧は 150 V+300 V=450 V となり、測定したい電圧と一致します。
しかし、直列回路では流れる電流は共通である必要があります。ステップ1で計算したように、IV1maxとIV2maxは異なる値です。
- もし、直列回路全体に V₂の最大目盛電流である 1/100 A が流れると、V₁には (1/100 A)×18 kΩ=180 V が印加されてしまい、V₁の最大目盛 (150 V) を超えて破壊する可能性があります。
- もし、直列回路全体に V₁の最大目盛電流である 1/120 A が流れると、V₂には (1/120 A)×30 kΩ=250 V しか印加されず、V₂は最大目盛 (300 V) を指示しません。
このため、単純にV₁とV₂を直列に接続するだけでは、両方を同時に最大目盛で測定することはできません。どちらかの電圧計の実効的な抵抗値を調整して、流れる電流を合わせる工夫が必要です。
抵抗接続の検討と決定 (ア・ウ・エ)
問題文では「直流電圧計 (ア) に、抵抗 (イ) kΩを (ウ) に接続し、これに直流電圧計 (エ) を直列に接続する」とあります。
V₁と V₂を直列接続して 450 V を分担させるのが目標なので、残りの電圧計 (エ) はもう一方の電圧計となります。
そして、(ア) に接続する抵抗の目的は、直列回路全体に流れる電流を、V₁と V₂がそれぞれ最大目盛を指示できるような共通の電流値に調整することです。
V₁には 150 V、V₂には 300 V を印加したいので、V₂に 300 V がかかっているとき、V₂には IV2max=1/100 A が流れます。この 1/100 A が直列回路全体に流れる共通電流であると考えるのが適切です。
V₁を含む回路部分には 150 V が印加され、かつ 1/100 A の電流が流れる必要があります。V₁単体では 150 V で 1/120 A しか流れません。必要な電流 1/100 A の方が、V₁が流せる電流 1/120 A よりも大きいので、V₁に余分な電流を分流させるための抵抗を並列に接続する必要があります。
したがって、(ア) は V₁、(ウ) は並列、(エ) は V₂ が適切であると判断できます。
並列抵抗の値の算出 (イ)
V₁に並列接続する抵抗 (イ) を R並列 とします。
- V₁にかかる電圧は 150 V です。
- V₁の内部には IV1max=1/120 A が流れます。
- V₁と R並列 の合成部分全体に流れる電流は、直列接続された V₂に流れる電流と同じ IV2max=1/100 A である必要があります。
- 並列抵抗 R並列 に流れる電流 IR並列 は、全体の電流から V₁に流れる電流を引いたものです。
IR並列=IV2max−IV1max=(1/100 A)−(1/120 A)
IR並列=(6/600 A)−(5/600 A)=1/600 A。
- 並列抵抗 R並列 にかかる電圧も V₁と同じ 150 V なので、オームの法則 (R=V/I) を用いて抵抗値を計算します。
R並列=150 V/(1/600 A)=150×600=90000 Ω=90 kΩ。
最終的な空欄の組み合わせ
以上の結果から、(ア) V₁、(イ) 90 kΩ、(ウ) 並列、(エ) V₂ となり、これは選択肢(1)と完全に一致します。
この構成での検証:
V₁と 90 kΩ の並列抵抗の合成抵抗 R合成1=(18 kΩ×90 kΩ)/(18 kΩ+90 kΩ)=(1620 kΩ2)/(108 kΩ)=15 kΩ。
この合成抵抗 R合成1 と V₂ (内部抵抗 RV2=30 kΩ) を直列に接続した回路全体の抵抗 Rtotal=R合成1+RV2=15 kΩ+30 kΩ=45 kΩ。
この回路に 450 V の電圧を印加すると、流れる電流 Itotal=450 V/45 kΩ=10 mA=1/100 A。
- V₁と並列抵抗の合成部分にかかる電圧 V1′=Itotal×R合成1=(1/100 A)×15 kΩ=150 V。
- V₂にかかる電圧 V2′=Itotal×RV2=(1/100 A)×30 kΩ=300 V。
V1′とV2′の合計は 150 V+300 V=450 V となり、各電圧計も最大目盛を指示するため、全ての条件を満たしています。
各直流電圧計の最大目盛電流を算出し、直列接続時に流れるべき電流と、それぞれの電圧計が受け持つべき電圧を重ねてみると、不足する電流を補うための並列抵抗の役割と、その値が明確に見えてきます。
参考リンク
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