平成22年度 筆記試験 問34 解説 幹線保護と分岐回路
⑤に示す幹線に関する記述として、誤っているものは。
- イ. 電線は、各部分ごとに、その部分を通じて供給される電気使用機械器具の定格電流の合計以上の許容電流のあるものを使用する必要がある。
- ロ. 動力幹線は、負荷が電動機であり定格電流の合計が50[A]を超えていたので、電動機の定格電流の1.1倍以上の許容電流のある電線を使用した。
- ハ. 動力幹線を保護するため、配電盤に施設する過電流遮断器は、電動機の定格電流の3倍以下で、電線の許容電流の2.5倍以下のものを使用した。
- ニ. 電灯幹線の分岐は、分岐点aから電灯分電盤への分岐幹線の長さが10[m]であり、電源側に施設された過電流遮断器の35[%]の許容電流のある電線を使用したので、過電流遮断器を省略した。 ✓ 正答
解説
この問題は、電気設備技術基準の解釈に基づく「過電流遮断器の省略」に関する規定を正しく理解しているかを問うものです。誤っている選択肢を見つける鍵は、分岐回路の「長さ」と「許容電流の割合」の条件が一致しているかを確認することです。
過電流遮断器の省略規定の基本
過電流遮断器を省略できる条件は、分岐点からの電線の長さによって以下の3パターンに整理されます。
- 分岐点から長さ 3m 以下:分岐回路の電線の許容電流が、幹線の過電流遮断器の定格電流の 35% 以上。
- 分岐点から長さ 8m 以下:分岐回路の電線の許容電流が、幹線の過電流遮断器の定格電流の 55% 以上。
- 分岐点から長さ 8m を超える場所:過電流遮断器を省略することはできない(35%や55%の条件を満たしていても不可)。
選択肢ニの条件は「長さ10m」かつ「許容電流35%」です。8mを超えている時点で、この条件がいかなる場合であっても過電流遮断器の省略は認められません。したがって、この記述は誤りとなります。
動力幹線の許容電流と過電流遮断器
選択肢ロとハは、動力幹線に関する重要な規定です。
選択肢ロについて、電動機負荷の幹線では、定格電流の合計が 50A を超える場合、電線の許容電流は「電動機の定格電流の合計の 1.1 倍」以上とする必要があります。この基準は、電動機の始動電流による電線の過熱や電圧降下を防ぐために定められています。
選択肢ハの過電流遮断器の選定は、電動機特有の「始動電流」を考慮した計算です。電動機の定格電流の合計の 3 倍に、他の電気機器の定格電流を加えた値以下であること、かつ電線の許容電流の 2.5 倍以下であること、という二段構えの制限がかかります。これらは、万が一の過負荷時には遮断しつつ、通常の始動時には遮断器が動作しないようにするための実務的な境界値です。
実務における安全設計の考え方
これらの規定は、住宅や工場などの配線工事において「どこまで回路を簡略化しても安全か」を規定するものです。設計者は、コストを削減するために過電流遮断器を省略したいと考えますが、その分だけ電線の太さを確保し、万が一の短絡時に電線が焼き切れる前に確実に遮断しなければなりません。
本問のような出題は、単なる暗記を求めているのではなく、現場において「この条件で遮断器を省略してよいか?」という判断を下す際に、最も重要な「長さの制限」と「太さの制限」を混同していないかを確認する意図があります。特に8mという数字は、工事現場における分岐配線の距離を考える際の重要な分岐点となります。