平成24年度 筆記試験 問19 解説 がいしの塩害対策
配電及び変電設備に使用するがいしの塩害 対策に関する記述として、誤っているものは。
- イ. シリコンコンパウンドなどのはっ水性絶縁物質をがいし表面に塗布する。
- ロ. 定期的にがいしの洗浄を行う。
- ハ. 沿面距離の大きいがいしを使用する。
- ニ. がいしにアークホーンを取り付ける。 ✓ 正答
解説
この問題は、塩害対策(塩分が付着して絶縁性能が低下することを防ぐ手法)と、その他のがいし保護対策を区別できているかを問うものです。誤っているものを選ぶ問題ですので、選択肢の中で「塩害を防ぐ目的ではないもの」を特定します。
塩害対策の目的とアークホーンの役割
塩害対策の根本的な目的は、がいし表面に付着した塩分が湿気を帯びて導電性を持つことによる「フラッシオーバ(絶縁破壊)」を防止することです。
一方で、アークホーンの役割は、雷サージなどによって過電圧が発生した際に、がいし表面ではなく、アークホーンの金属電極間で放電を発生させることにあります。これにより、強力なアーク熱からがいし本体の破損や焼損を防ぎます。つまり、アークホーンは「過電圧による物理的損傷」を防ぐための装置であり、「塩分による絶縁不良」を解決する手段ではありません。
塩害を克服するための現場の手法
塩害地域では、がいし表面の導電性を抑制するか、あるいは沿面距離を稼ぐことで絶縁性能を確保します。
イのシリコンコンパウンド塗布は、表面をはっ水性にし、塩分を含んだ水分が膜状に広がるのを防ぎ、絶縁抵抗を維持する有効な手法です。 ロの洗浄は、表面に溜まった塩分を定期的に物理除去することでフラッシオーバを防ぐ保守作業です。 ハの沿面距離が大きいがいし(耐塩がいしなど)を使用するのは、同じ電圧でも表面に沿って放電しにくい構造にすることで、導電路ができても絶縁を保とうとする設計上の対策です。
これらに対し、ニの選択肢は「アーク」という別の現象に対する保護手法であり、塩害という「環境要因」に対する対策ではありません。
試験における出題意図と現場での重要性
試験では「対策」という言葉が共通していても、その「目的」が全く異なる選択肢を混ぜることで、単なる暗記ではなく、機器の設置目的を理解しているかを試しています。
実務においては、海沿いの設備では、これらの対策を組み合わせるのが一般的です。例えば、耐塩がいしを採用した上で、さらにアークホーンも併設するというケースは珍しくありません。しかし、これらは「絶縁を保つため」と「本体を守るため」という異なる目的でそこに存在しています。
このような知識は、送配電設備の設計や保守点検を行う際、どの故障モードに対してどの対策が有効であるかを判断するための判断基準となります。単に「塩害対策はこれ」と覚えるだけでなく、「なぜこの装置が必要なのか」を整理しておくことで、不適切な設計や誤った対策を未然に防ぐ力が身につきます。