平成30年度 筆記試験(追加試験分) 問19 解説 高調波の特性と対策
高調波に関する記述として,誤っているものは。
- イ. 整流器やアーク炉は高調波の発生源となりやすいので,高調波抑制対策を検討する必要がある。
- ロ. 高調波は,進相コンデンサや発電機に過熱などの影響を与えることがある。
- ハ. 進相コンデンサには高調波対策として,直列リアクトルを設置することが望ましい。
- ニ. 電力系統の電圧,電流に含まれる高調波は,第5次,第7次などの比較的周波数の低い成分はほとんど無い。 ✓ 正答
解説
この問題は、高調波の特性に関する基本知識を問う内容です。選択肢二に注目すると「第5次、第7次といった低次高調波がほとんどない」とありますが、実際の電力系統において、これらは代表的な高調波成分であり、無視できない存在です。したがって、この記述が誤りとなります。
高調波発生のメカニズム
高調波とは、商用周波数(50Hzまたは60Hz)の整数倍の周波数を持つ波形のことです。電力系統において高調波が発生する主な原因は、半導体素子を用いた電力変換装置です。
サイリスタやダイオードを用いた整流器、可変速駆動装置(インバータ)、アーク炉などは、電流を断続的に流すため、波形が歪みます。この「歪んだ波形」をフーリエ級数で分解すると、基本波に加えて第3次、第5次、第7次といった高調波成分が含まれていることが分かります。特に、3相整流回路などでは理論的に第(6n±1)次の高調波(第5次、第7次、第11次など)が発生しやすいため、これらは電力系統において非常に一般的で、対策が必要な主要成分となっています。
高調波がもたらす弊害
高調波は、本来想定されていない周波数の成分であるため、機器に様々な悪影響を及ぼします。
特に重要なのが、進相コンデンサとの関係です。進相コンデンサは周波数が高くなるほどリアクタンス(抵抗成分)が小さくなる性質があります。一方で、配電線にはインダクタンス成分が存在するため、特定の周波数でコンデンサと回路が「直列共振」を起こし、大きな電流が流れてコンデンサが焼損したり、過熱したりするリスクがあります。
この対策として、コンデンサに直列にリアクトルを接続します。これにより、コンデンサ回路を誘導性(L成分が優勢)にシフトさせ、高調波による共振を避けるとともに、突入電流を抑制する役割を果たします。発電機においても、高調波電流による巻線の異常発熱や、電圧波形の歪みによる計器の誤動作を引き起こす可能性があるため、高調波抑制対策は実務上非常に重要です。
試験対策としての考え方
第一種電気工事士の試験において、高調波の問題は「発生源」「影響」「対策」の3点セットで整理するのが鉄則です。
- 発生源:電力用半導体やアーク炉など、非線形な特性を持つ負荷。
- 影響:機器の過熱、振動、騒音、コンデンサの焼損、保護継電器の誤動作。
- 対策:直列リアクトルの設置、高調波フィルタの設置、パルス数の増加による発生抑制。
この問題の選択肢二は、教科書的な知識から大きく外れた記述をあえて誤りとして出題しています。実務の現場では「どの次数の高調波が顕著か」を分析して対策を講じるため、第5次や第7次が無視できるという選択肢は、高調波対策の基本コンセプトと矛盾すると即座に判断できるようになりましょう。