平成30年度 第一種 筆記試験 問10 解説 誘導電動機の周波数
6極の三相かご形誘導電動機があり, その 一次周波数がインバータで調整できるよう になっている。この電動機が滑り5%, 回転速度1140 min⁻¹で運転されている場合 の一次周波数[Hz]は。
- イ. 30
- ロ. 40
- ハ. 50
- ニ. 60 ✓ 正答
解説
【問10】6極の三相かご形誘導電動機があり, その一次周波数がインバータで調整できるようになっている。この電動機が滑り5%, 回転速度1140 min-1で運転されている場合の一次周波数[Hz]は。
この問題は、誘導電動機の同期速度と滑りの関係を理解しているかを問うものです。計算は以下の手順で進めます。
- まず、与えられた回転速度 と滑り から、電動機の同期速度 を求めます。
- 次に、求めた同期速度 と電動機の極数 から、一次周波数 を算出します。
具体的に数値を当てはめていきましょう。 回転速度 、滑り です。 回転速度 と同期速度 の関係式は ですから、
次に、同期速度 と一次周波数 、極数 の関係式 を使います。 極数 なので、
したがって、一次周波数は 60 Hz となります。
誘導電動機の基本原理と計算式
この問題で核となるのは、三相誘導電動機の「同期速度」と「滑り」という二つの重要な概念です。これらを理解することが、誘導電動機に関する問題を解く上で不可欠です。
同期速度とは
同期速度 とは、誘導電動機において回転磁界が回転する速度のことです。電動機の固定子(ステータ)に三相交流電流を流すと、磁界が回転しながら発生します。この回転磁界の速度は、電源の周波数 と電動機の極数 によって決まります。
同期速度 [] を求める公式は以下の通りです。
ここで、
- : 一次周波数 [Hz]
- : 極数
この式からわかるように、周波数が高くなると同期速度は速くなり、極数が多くなると同期速度は遅くなります。これは電動機の設計や制御において非常に重要な関係です。
滑りとは
誘導電動機は、回転磁界の速度(同期速度 )よりも少し遅れて回転子(ロータ)が回転します。この回転磁界と回転子の速度差を「滑り」と呼びます。もし回転子と回転磁界が同じ速度で回転してしまったら、相対速度がなくなり電磁誘導が起こらないため、トルクが発生しません。そのため、誘導電動機は必ず滑りを持ちながら運転されます。
滑り は、同期速度 と実際の回転速度 [] を用いて、以下の式で表されます。
この式を変形すると、回転速度 を求める式 や、同期速度 を求める式 を導き出すことができます。滑り は通常、0から1の間の値を取り、%で表記されることも多いです(例: 5% = 0.05)。
問題解決への思考プロセス
今回の問題では、最終的に一次周波数 を求めることになります。そのためには、公式 を使って を逆算する必要があります。この式を使うためには、同期速度 と極数 がわかっている必要があります。極数 は問題文に明記されていますが、同期速度 は直接与えられていません。
そこで、まずは与えられた回転速度 と滑り を使って同期速度 を算出する、という道筋を立てます。
- 回転速度 と滑り を、関係式 に代入して を計算。
- 算出した と極数 を、関係式 に代入して を計算。
このように、複数の公式を組み合わせて解く問題では、最終的に求めたいものから逆算して、どの情報が不足しているか、その不足情報をどうやって得るか、という思考プロセスが重要になります。
インバータと誘導電動機の速度制御
この問題文には「一次周波数がインバータで調整できるようになっている」という記述があります。これは、この知識が実社会でどのように活用されているかを示す重要なヒントです。
通常の商用電源では、周波数は東日本では50Hz、西日本では60Hzと固定されています。しかし、誘導電動機の同期速度 の式からもわかるように、周波数 を変更することで、電動機の回転速度を自由に変えることができます。この周波数を可変にする装置がインバータです。
インバータは、直流電力を交流電力に変換する際に、出力する交流の周波数と電圧を自由に制御できる電力変換装置です。これにより、ポンプやファン、コンベア、工作機械など、様々な産業機械の速度を、目的に応じてきめ細かく調整することが可能になります。
例えば、ポンプの流量を調整したい場合、従来はバルブを絞っていましたが、インバータでモーターの回転速度を下げれば、無駄なエネルギーを使わずに流量を制御できます。これは省エネルギー化に大きく貢献するため、第一種電気工事士として設備の設計・施工・管理を行う上で、インバータによる電動機の速度制御は非常に重要な技術であり、その基礎となる同期速度や滑りの計算は必須の知識と言えるでしょう。