第一種電気工事士試験 / 平成30年度 第一種 筆記試験 / 問19
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平成30年度 第一種 筆記試験 問19 解説 変圧器の中性点接地方式

送電用変圧器の中性点接地方式に関する記 述として,誤っているものは。

  1. イ. 非接地方式は,中性点を接地しない方式で,異常電圧が発生しやすい。
  2. ロ. 直接接地方式は,中性点を導線で接地する方式で,地絡電流が大きい。
  3. ハ. 抵抗接地方式は,地絡故障時,通信線に対する電磁誘導障害が直接接 地方式と比較して大きい。 ✓ 正答
  4. ニ. 消弧リアクトル接地方式は,中性点を送電線の対地静電容量と並列 共振するようなリアクトルで接地する方式である。

解説

この問題は、送電用変圧器の中性点接地方式に関する知識を問うものです。各接地方式の基本的な特徴、特に地絡電流の大きさやそれに伴う通信線への電磁誘導障害の影響を理解していれば、正解にたどり着けます。

選択肢「ハ」が誤りです。抵抗接地方式は、地絡電流を制限することを目的とした方式であり、直接接地方式と比較して地絡電流が小さくなるため、通信線に対する電磁誘導障害も軽減されます。「障害が大きい」という記述は、この方式の利点と矛盾するため、誤りとなります。

中性点接地方式の基礎知識

送電線路や変圧器の中性点接地方式は、地絡事故(電線が大地に接触する事故)が発生した際に、回路を保護し、周辺への影響を最小限に抑えるための重要な技術です。主な目的は以下の通りです。

  1. 地絡故障時の健全相の対地電圧上昇の抑制: 事故時に健全な相の電圧が異常に上昇するのを防ぎ、絶縁破壊を防ぎます。
  2. 地絡過電流の制限: 地絡電流が大きすぎると機器の損傷や保護継電器の負担が大きくなるため、適切な値に制限します。
  3. 保護継電器の確実な動作: 地絡事故を確実に検出し、迅速に遮断するための電流を提供します。
  4. 通信線への誘導障害の軽減: 地絡電流によって発生する電磁誘導が、近くを通る通信線に与える影響を低減します。

これらの目的に応じて、いくつかの接地方式が使い分けられています。

各接地方式とその特徴

ここでは、主要な中性点接地方式について詳しく見ていきましょう。

非接地方式

変圧器の中性点を直接大地に接続しない方式です。

  • 特徴:
    • 地絡電流が非常に小さい(線路の対地静電容量による充電電流のみ)。
    • 地絡事故が発生しても、比較的長時間送電を継続できる場合がある。
    • 異常電圧(共振過電圧など)が発生しやすい。
    • 地絡電流が小さいため、保護継電器の動作が不安定になることがある。
  • 主な用途: 比較的規模の小さい高圧配電線や、低圧配電線の一部で用いられます。

直接接地方式

変圧器の中性点を直接、低抵抗の導線で大地に接続する方式です。

  • 特徴:
    • 地絡電流が非常に大きい。
    • 地絡時の健全相の対地電圧上昇が最も小さい。
    • 地絡保護継電器が確実に動作し、高速遮断が可能。
    • 地絡電流が大きいため、通信線に対する電磁誘導障害も大きい。
    • 送電線の絶縁レベルを低く設定できる(コスト削減)。
  • 主な用途: 200kV以上の超高圧送電線路で広く採用されています。

抵抗接地方式

変圧器の中性点と大地との間に抵抗器を挿入して接地する方式です。

  • 特徴:
    • 直接接地方式と非接地方式の中間的な特性を持ちます。
    • 地絡電流を適度な値に制限できる。直接接地方式よりは小さく、非接地方式よりは大きい。
    • 地絡電流を制限するため、通信線への電磁誘導障害を直接接地方式よりも軽減できる。
    • 健全相の対地電圧上昇も直接接地方式よりは大きいが、非接地方式よりは小さい。
    • 保護継電器の動作が安定しやすい。
  • 主な用途: 154kV以下の比較的高い電圧の送電線路や、一部の配電線路で用いられます。問題文の記述「地絡故障時、通信線に対する電磁誘導障害が直接接地方式と比較して大きい」は、この方式の目的と効果に反するため、誤りとなります。

消弧リアクトル接地方式(ペーターゼンコイル接地方式)

変圧器の中性点と大地との間に、送電線路の対地静電容量と並列共振するようなリアクトル(消弧リアクトル)を挿入して接地する方式です。

  • 特徴:
    • 地絡事故時に、リアクトル電流が線路の対地静電容量による充電電流を打ち消し、地絡点での電流をほぼ零にすることができます。
    • これにより、地絡アークを自然に消滅させ、事故相を切り離さずに送電を継続できる可能性がある。
    • 異常電圧が発生しやすい(共振現象)。
  • 主な用途: 比較的距離の長い中電圧送電線路で採用されることがあります。

誤りを見抜く思考プロセス

本問を解く上で重要なのは、各接地方式の「地絡電流の大きさ」と、それによって生じる「通信線への電磁誘導障害」の関係性を理解することです。

  1. 問題文の要求確認: 「誤っているもの」を選ぶ。
  2. 選択肢イ: 「非接地方式は、中性点を接地しない方式で、異常電圧が発生しやすい。」
    • 非接地は接地しないこと、共振過電圧による異常電圧発生は非接地方式の弱点であるため、正しい記述。
  3. 選択肢ロ: 「直接接地方式は、中性点を導線で接地する方式で、地絡電流が大きい。」
    • 直接接地は中性点を直接接続するため、抵抗が最も小さく、地絡電流が最大になる。正しい記述。
  4. 選択肢ハ: 「抵抗接地方式は、地絡故障時、通信線に対する電磁誘導障害が直接接地方式と比較して大きい。」
    • 抵抗接地方式の最大の目的の一つは、地絡電流を制限することです。地絡電流が制限されれば、それに伴う電磁誘導障害も軽減されるはずです。直接接地方式は地絡電流が最も大きいため、電磁誘導障害も最も大きくなります。したがって、抵抗接地方式の方が直接接地方式より障害が大きいというのは、論理的に誤りです。これが不正解、つまり誤っている記述です。
  5. 選択肢ニ: 「消弧リアクトル接地方式は,中性点を送電線路の対地静電容量と並列共振するようなリアクトルで接地する方式である。」
    • 消弧リアクトル(ペーターゼンコイル)接地方式の原理そのものです。正しい記述。

この思考プロセスにより、選択肢ハが誤っていると確信できます。

この知識が役立つ場面

中性点接地方式の知識は、第一種電気工事士試験だけでなく、電気主任技術者試験など、電力系統に関する幅広い分野で問われる重要な基礎知識です。

  • 系統設計: どのような電力系統を構築するかによって、適切な接地方式を選定する必要があります。例えば、都市部の高密度な送電網では、地絡事故時の影響を抑えつつ、通信線への影響も考慮する必要があります。
  • 保護継電器の選定: 各接地方式の地絡電流の特性を理解していなければ、適切な地絡保護継電器を選定し、その設定を行うことはできません。
  • 事故対応: 地絡事故が発生した際、その系統がどの接地方式を採用しているかによって、事故時の現象や復旧手順が異なります。

この問題を通じて、各接地方式の基本的な特性、特にその「目的」と「結果」を関連付けて理解することが、単なる暗記ではなく、実務に役立つ深い知識として定着させる上で非常に重要です。

参考リンク

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