平成30年度 第一種 筆記試験 問23 解説 避雷器の用途
写真に示す機器の用途は。
- イ. 高圧電路の短絡保護
- ロ. 高圧電路の地絡保護
- ハ. 高圧電路の雷電圧保護 ✓ 正答
- ニ. 高圧電路の過負荷保護
解説
写真の機器は、がいしひだが複数ある円筒状の白い部品が三つ並んでおり、下部が接続されています。これは高圧電路に設置される「避雷器(がいし形避雷器)」であり、その目的は電路や機器を雷サージから保護することです。したがって、選択肢「ハ. 高圧電路の雷電圧保護」が正解となります。
避雷器の役割と仕組み
避雷器は、電力系統に侵入する雷サージや開閉サージなどの異常に高い電圧(過電圧)から、変圧器や開閉器といった電気機器、そして電路全体を保護するための重要な保安機器です。
通常、電力系統は安定した商用周波数電圧で運転されています。しかし、落雷(直撃雷や誘導雷)が発生すると、瞬間的に数万Vから数十万Vにも達する非常に高い電圧が電路に加わることがあります。また、遮断器などの開閉操作時にも「開閉サージ」と呼ばれる過電圧が発生することがあります。これらの異常電圧は、電気機器の絶縁を破壊し、重大な故障や停電を引き起こす原因となります。
避雷器の内部には、非直線抵抗特性を持つ素子(主に酸化亜鉛素子)が内蔵されています。この素子は、平常時の電圧では非常に高い抵抗値を示し、ほとんど電流を流しません。しかし、異常な高電圧(雷サージなど)が印加されると、その抵抗値が急激に低下し、過電圧に伴う大電流を速やかに大地へと放流します。これにより、電路や接続されている機器にかかる電圧を、機器の絶縁耐力以下(制限電圧)に抑え、機器の損傷を防ぎます。サージ電流が通過し、電圧が平常値に戻ると、避雷器の抵抗値も自動的に元の高い状態に戻り、通常運転を継続します。
この一連の動作により、避雷器は自己消弧性を持っており、一度サージを放流した後も系統を停電させることなく正常な状態に戻ることができます。
他の選択肢の機器との違い
この問題は、高圧受電設備における主要な保護機器の役割を理解しているかを問うものです。他の選択肢が示す保護の用途は、それぞれ異なる機器が担っています。
- イ. 高圧電路の短絡保護: 短絡(ショート)とは、電路の相間や相と大地が予期せぬ形で接続され、極めて大きな電流が流れる状態です。この短絡電流から電路や機器を保護するのが、高圧ヒューズ(PF: Power Fuse)や遮断器(CB: Circuit Breaker)です。高圧ヒューズは短絡電流が流れると溶断して回路を開き、遮断器は短絡電流を検出するリレー(過電流継電器など)と連動して回路を遮断します。
- ロ. 高圧電路の地絡保護: 地絡とは、電路の一部が大地と接続され、漏れ電流が流れる状態です。地絡による感電事故や火災を防ぐため、地絡保護継電器(GR: Ground Relay)や地絡方向継電器(DGR: Directional Ground Relay)が設置され、地絡電流を検出すると遮断器に指令を送り回路を遮断します。
- ニ. 高圧電路の過負荷保護: 過負荷とは、定格電流を超える電流が流れ続ける状態です。この状態が続くと機器の焼損や発火につながるため、過電流保護継電器(OCR: Over Current Relay)が過電流を検出して遮断器を動作させることで、回路を保護します。高圧ヒューズも限定的ではありますが、過負荷保護の役割を一部担うことがあります。
このように、高圧受電設備には、雷サージ、短絡、地絡、過負荷という、それぞれ異なる異常現象に対応するための専用の保護機器が多層的に設置されています。
電気工事士としての実務における重要性
第一種電気工事士は、高圧受電設備の設計・施工・保守に携わることが多く、これらの保護機器の役割や設置基準を正確に理解していることが不可欠です。避雷器の設置は、電気設備の技術基準の解釈や内線規程にも定められており、特に屋外に設置される高圧引込口などには必須とされています。
避雷器の選定にあたっては、使用する系統の電圧クラスや、期待される保護レベルを考慮する必要があります。また、避雷器はその効果を最大限に発揮するために、適切な接地工事が不可欠です。接地線は可能な限り短く、太くすることが求められます。これらの知識は、安全で信頼性の高い電気設備を構築するために、電気工事士にとって非常に重要な実務知識となります。