令和2年度 第一種電気工事士 筆記試験 問44 解説 押しボタンスイッチ
④で示す押しボタンスイッチ PB-3 を 正転運転中に押したとき,電動機の動作 は。
- イ. 停止する。
- ロ. 逆転運転に切り替わる。
- ハ. 正転運転を継続する。 ✓ 正答
- ニ. 熱動継電器が動作し停止する。
解説
この問題は、自己保持回路とインターロック回路のシーケンス図が読めるかを問う基本的な設問です。正転運転中に「正転用」のボタンを押しても回路は何も変わらない、という点を見抜くことが正解の近道です。
なぜ正転運転が継続されるのか
三相誘導電動機の正逆転回路において、押しボタンスイッチは通常「自己保持回路」と「インターロック回路」の組み合わせで構成されています。
正転運転中、電磁接触器(MC-Fとします)は自己保持接点によって電流が流れ続けています。このとき、操作回路にはインターロックとして「逆転用電磁接触器(MC-R)のb接点」が直列に入っていますが、同時に「正転用押しボタン(PB-3)」の回路構成も重要です。
正転ボタンを押すという行為は、正転用の電磁接触器を励磁させるための命令ですが、すでに正転用の電磁接触器は自己保持によって励磁状態にあります。そのため、たとえ同じ正転用のボタンを再度押したとしても、回路の物理的な状態には何の影響も与えず、そのままの状態(正転)が継続されます。
シーケンス回路の論理構造
この問題を解くためのポイントは、回路図上の「入力」と「現在の状態」を区別することです。
現在の状態を確認する まず、正転運転中ということは、正転用の電磁接触器(MC-F)が動作し、回路が自己保持されている状態です。
操作による影響を推測する 問題文にあるPB-3(正転用押しボタン)を押すと、確かに正転回路に電圧はかかりますが、すでにMC-Fは動作しているため、電気的な変化は起きません。
誤作動防止の仕組み(インターロック)を理解する もしこれが「逆転用」のボタンを押した場合であれば、インターロック回路によって逆転側が物理的に動作しないようになっています。今回は同じ正転用ボタンであるため、回路図をたどっても「現状維持」という結論に至ります。
実務における回路保護と安全思想
この知識は、工場やビル管理における設備の誤操作防止に直結します。現場では、作業員が誤ってボタンを二度押ししたり、運転中に操作したりすることが想定されます。
もし、運転中に同じボタンを押すことで停止してしまう仕様であれば、頻繁に設備が止まり生産性や信頼性が損なわれます。一方で、もし正転運転中に誤って逆転ボタンを押してしまった場合、そのままでは電動機に過大な負荷がかかり故障の原因となります。
そのため、あえて「ボタンを押しても反応させない(継続)」ことや「反対側のボタンを押しても動作させない(インターロック)」という設計思想が組み込まれています。第一種電気工事士の試験においてこの問題が出題されるのは、単なる回路の読み取り能力だけでなく、こうした安全で合理的な回路設計の考え方を理解しているかを確認するという教育的な意図があります。