令和2年度 第一種電気工事士 筆記試験 問46 解説 PASの役割
①で示す機器の役割は。
- イ. 一般送配電事業者の地絡事故を検出し,高圧断路器を開放する。
- ロ. 需要側電気設備の地絡事故を検出し,高圧交流負荷開閉器を開放する。 ✓ 正答
- ハ. 一般送配電事業者の地絡事故を検出し,高圧交流遮断器を自動遮断する。
- ニ. 需要側電気設備の地絡事故を検出し,高圧断路器を開放する。
解説
この問題は、高圧受電設備において最も重要な保護装置の一つであるPAS(高圧交流負荷開閉器)の役割を問う定番問題です。正解を導くための鍵は「需要側の事故を検出する」「負荷開閉器を開放する」という2点に注目することです。
PASの役割と構成要素
PASは「高圧交流負荷開閉器(Pole Mounted Air Switch)」の略称であり、主に引込柱の頂部に設置されます。この機器の主な目的は、受電設備内で地絡事故が発生した際に、その事故電流を遮断し、他の電力系統(一般送配電事業者側の設備)へ事故が波及するのを防ぐことです。
断路器は原則として負荷電流や故障電流を遮断する能力を持たず、無負荷状態で切り離すための機器です。一方、負荷開閉器は負荷電流を遮断でき、保護継電器と組み合わせることで事故時の遮断も可能になります。そのため、選択肢に含まれる「断路器を開放する」という選択肢は誤りとなります。
保護協調の考え方
試験でこの問題を解く際には、保護協調の概念を思い浮かべてください。電気事故が発生したとき、できる限り事故点に近い場所で遮断することで、停電の範囲を最小限に留めるのが基本です。
もし、需要家側の事故を一般送配電事業者側(電力会社側)の遮断器で止めてしまうと、近隣の広範囲な地域が停電してしまいます。これを防ぐために、PASが需要家側でいち早く地絡を検出し、自ら回路を開放することで、電力会社側の遮断器が動作する前に切り離しを行うのです。
現場における実務と試験での視点
この機器は、特に自家用電気工作物において、電力会社との受給点直近で保護を行う役割を担っています。試験では、PASに組み合わされている「地絡方向継電器(DGR)」とのセットで出題されることも多くあります。
実務においては、PASが正しく動作しなければ電力会社へ大きな迷惑をかけることになるため、定期的な点検や動作確認が極めて重要です。この問題は単なる知識の暗記ではなく、電力供給の安定性や安全な運用というシステム全体を見渡す力を求めています。選択肢を吟味する際は、機器の名前(開閉器か遮断器か)と、誰が守られる対象なのか(需要側か供給側か)を整理することで、迷わず正答を選べるようになります。