令和7年度 下期 学科試験 問18 解説 架空送電線の雷対策
架空送電線の雷対策として、適切なもの は。
- イ. がいしにアークホーンを取り付ける。 ✓ 正答
- ロ. がいしの洗浄装置を施設する。
- ハ. 電線にダンパを取り付ける。
- ニ. がいし表面にシリコンコンパウンドを塗布する。
解説
雷対策の判断基準
この問題は、送電線において「雷(過電圧)」が引き起こす故障と、その対策機器を正しく結びつけられているかを問うものです。雷対策としては、がいしの両端に放電経路を作り、がいし本体の破損を防ぐ「アークホーン(放電角)」が定石です。他の選択肢は雷とは異なる現象への対策であるため、これらを識別することで正解を導き出します。
雷対策におけるアークホーンの役割
がいしに雷サージ(急激な電圧上昇)が加わると、がいしの表面や空中で絶縁破壊が起こり、地絡事故が発生します。これを「フラッシオーバ」と呼びます。
このとき、がいし本体を沿ってアーク(火花放電)が走ると、がいしは激しい熱によって割れてしまい、送電機能が失われます。そこで登場するのがアークホーンです。アークホーンはがいしの両端に金属製の角(つの)のような電極を配置したもので、がいし本体よりもアークホーン間で先に放電するように設計されています。
これにより、アークはがいしから離れた空間で発生することになり、がいし本体の損傷を回避できます。電気工事士試験では、雷対策=アークホーンという連想を確実にしておくことが重要です。
混同しやすい「塩害」対策との区別
選択肢ロとニは、主に「塩害」に対する対策です。
ロの「がいし洗浄装置」は、海岸付近などでがいし表面に塩分が付着し、絶縁性能が低下して漏れ電流が流れる(塩害)のを防ぐために、水で塩分を洗い流す設備です。 ニの「シリコンコンパウンドの塗布」も、同様に塩分の付着を抑えたり、吸着した塩分をシリコン内に取り込んで絶縁性能を保つための保守手法です。
これらは雷という「過電圧」現象ではなく、塩分による「絶縁性能の低下」という現象に対する対策であるため、今回の設問には該当しません。
ハの「ダンパの取り付け」は、電線の「風による振動」を抑制するためのものです。電線が風で振動し続けると、疲労断線やがいし装置の損傷を招くため、エネルギーを吸収するダンパを取り付けます。これも雷とは無関係です。
試験問題の意図と現場での活用
この問題は、架空送電線が直面する様々な外部要因(雷、塩分、風)を整理できているかを問うています。現場において、どのようなトラブルが発生しているのか(あるいは防ぎたいのか)を判断できなければ、適切な工法や機器の選定はできません。
試験対策としては、単に用語を丸暗記するのではなく、以下の表のように「現象」と「対策」をセットで整理することが合格への近道です。
| 現象 | 対策の具体例 |
|---|---|
| 雷(過電圧) | アークホーン(放電角) |
| 塩害(汚損) | 洗浄装置、シリコン塗布、耐塩がいし |
| 風(振動) | ダンパ |
実際の送電線設計や保守の現場では、地域特性(雷が多いか、海に近いか、風が強いか)に応じてこれらの対策を組み合わせて運用しています。まずは「雷といったらアークホーン」という基本を軸にして、他の対策との違いを明確にしておきましょう。