令和7年度 下期 学科試験 問29 解説 地中電線路
地中電線路の施設に関する記述として, 不適切なものは。
- イ. 長さが15mを超える高圧地中電線路を管路式で施設し, 物件の名称, 管理 者及び電圧を表示した埋設表示シートを, 管と地表面のほぼ中間に施設 した。
- ロ. 地中電線路に絶縁電線を使用した。 ✓ 正答
- ハ. 地中電線路に使用する金属製の電線接続箱にD種接地工事を施した。
- ニ. 地中電線路を暗きょ式で施設する場合, 地中電線を不燃性又は自消性の ある難燃性の管に収めて施設した。
解説
地中電線路に使用する電線の選定基準がこの問題の核心です。結論として、地中電線路には原則として「ケーブル」を使用しなければならず、絶縁電線の使用は認められていないため、ロが不適切です。
地中電線路に求められる安全性
地中電線路は、地面の中という過酷な環境に設置されます。水分の侵入、土圧による圧力、さらには掘削工事などによる外部からの物理的な衝撃が加わる可能性があるため、極めて高い絶縁性能と機械的な強度が要求されます。
絶縁電線は、空中や管路内での使用を想定して設計されており、地中電線路に求められるような「水密性」や「耐圧性」を備えていません。これに対してケーブルは、導体の周囲に絶縁体が施され、さらにそれを保護するためのシース(外装)で覆われているため、地中での長期使用に耐えうる構造となっています。試験で「地中電線路」という言葉が出てきたら、瞬時に「ケーブル」というキーワードを連想できるようにしておくのが鉄則です。
不適切な選択肢を見極める思考のステップ
本問のような「不適切なものを選べ」という問題では、正しい選択肢が積み重なっている中で、一つだけルール違反をしているものを見つける作業を行います。
- 選択肢ロを確認:地中電線路に絶縁電線を使用するとあります。ここで「地中にはケーブルが基本」という知識を照らし合わせ、即座に「これは誤りである」と判断します。
- 他の選択肢の妥当性を確認:
- 選択肢イ(埋設表示シート):地中電線路がどこにあるかを掘削作業員に知らせることは、事故防止のために非常に重要です。規定通りであり適切です。
- 選択肢ハ(接地工事):金属製の接続箱は、万が一の漏電時に感電を防ぐため、接地工事が必要です。高圧地中電線路において、D種接地工事は規定に適っています。
- 選択肢ニ(暗きょ式と難燃性):暗きょ(トンネル状の空間)に電線を収める場合、火災が延焼しないよう難燃性の材料を使用することは安全上の基本ルールです。
このように、他の選択肢が安全のための具体的な工夫を述べている一方で、選択肢ロだけが材料選定の基本原則を犯している、という構造を読み取ることが重要です。
実務で求められる電線選定の重要性
この問題が問うているのは、単なる知識の暗記ではなく、現場における事故の未然防止能力です。もし現場で知識不足から絶縁電線を地中に埋設してしまった場合、短期間で絶縁破壊が発生し、漏電事故や停電を引き起こすリスクが高まります。
第一種電気工事士は、大規模な施設や受電設備の設計・施工を担う責任ある立場です。地中電線路の設計にあたっては、ケーブルの許容電流や布設方法(管路式、暗きょ式、直接埋設式)の選択だけでなく、その背景にある「なぜこの材料でなければならないのか」という安全基準を深く理解していることが、不測の事態を防ぐための最も強力なツールとなります。