第一種電気工事士試験 / 令和8年度上期 学科試験 / 問10
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令和8年度上期 学科試験 問10 解説 誘導電動機の速度制御

かご形誘導電動機のインバータによる速度制御に関する記述として, 正しいものは。

  1. イ. 電動機の入力の周波数を変えることによって速度を制御する。 ✓ 正答
  2. ロ. 電動機の入力の周波数を変えずに電圧を変えることによって速度を制御する。
  3. ハ. 電動機の滑りを変えることによって速度を制御する。
  4. ニ. 電動機の極数を切り換えることによって速度を制御する。

解説

誘導電動機の回転速度を決定する要素を整理し、インバータがどのパラメータに介入しているかを考えるのが最も確実な解法です。回転速度の基本式 N=(1s)×120fpN = (1 - s) \times \frac{120f}{p} において、インバータは周波数 ff を自在に変化させることで、速度を連続的かつ広範囲に制御します。

同期速度の公式から導く速度制御の仕組み

かご形誘導電動機の回転速度 NN [min1^{-1}] は、以下の数式で表されます。

N=Ns(1s)=120fp(1s)N = N_s (1 - s) = \frac{120f}{p} (1 - s)

ここで、NsN_s は同期速度、ff は電源周波数、pp は磁極の数、ss は滑りです。この式から、回転速度を変化させるには「周波数 ff」「極数 pp」「滑り ss」のいずれかを変えればよいことがわかります。

インバータ(逆変換装置)は、商用交流を一度直流に整流し、再び任意の周波数と電圧の交流を作り出す装置です。この装置を用いることで、電源周波数 ff を直接操作できるため、極数を固定したまま、滑りに頼ることなく同期速度 NsN_s そのものを効率よく変化させることが可能になります。これがインバータによる速度制御の本質です。

周波数と電圧を同時に変化させる理由

インバータ制御では、単に周波数 ff だけを変えるのではなく、電圧 VV も同時に変化させる「V/fV/f 一定制御」が一般的に行われます。

もし、電圧を一定に保ったまま周波数だけを下げると、電動機内部の磁束が過大になり、鉄心が磁気飽和を起こして異常発熱や焼損の原因となります。逆に周波数を上げすぎると、磁束が弱まり十分なトルクが得られなくなります。そのため、インバータは周波数 ff の増減に合わせて電圧 VV も比例させることで、電動機の磁束を適正に保ち、低速から高速まで安定したトルク特性を実現しています。

他の選択肢が示す制御方式の性質

選択肢の「ロ」「ハ」「ニ」は、インバータ制御以外の代表的な速度制御方式を指しています。

「ロ」の電圧を変える制御は、一次電圧制御と呼ばれます。トルクが電圧の2乗に比例する性質を利用して滑り ss を変化させますが、効率が悪く制御範囲も狭いため、小容量のファンなどに用途が限られます。

「ハ」の滑りを変える制御は、主に巻線形誘導電動機において二次抵抗を調整することで行われます(比例推移)。しかし、本問の対象である「かご形」では構造上、二次抵抗を外部から直接変えることはできません。

「ニ」の極数を切り換える制御は、巻線の接続を物理的に切り換える方式です。段階的な速度変化(例えば4極から8極への切り換えで速度が半分になる等)しかできず、インバータのような無段階で滑らかな制御は不可能です。

現代の設備管理におけるインバータの重要性

この問題が第一種電気工事士の試験で頻出するのは、現代の産業設備においてインバータが省エネルギー化の主役だからです。

かつての工場やビル設備では、電動機は常に一定速度で回転させ、風量や流量の調整はダンパーやバルブを絞ることで「機械的に抵抗を増やして」行っていました。これは、自動車で言えばアクセル全開のままブレーキを踏んで速度を調整するような、非常に非効率な状態でした。

インバータの導入により、必要な負荷に合わせて電動機の回転数そのものを最適化できるようになったため、消費電力を劇的に削減できるようになりました。工事士として現場に立つ際、インバータの動作原理を理解しておくことは、単なる配線作業を超えて、システムの保守点検やトラブルシューティングを行うための必須知識と言えます。

参考リンク

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