第一種電気工事士試験 / 令和8年度上期 学科試験 / 問31
certification-simodake-work

令和8年度上期 学科試験 問31 解説 高圧受電設備の機器

設問図

問30から問34までは,下の図に関する問いである。 図は,自家用電気工作物構内の高圧受電設備及び低圧動力設備を表した図である。 この図に関する各問いには,4通りの答え(イ,ロ,ハ,ニ)が書いてある。それぞれの問いに対して,答えを1つ選びなさい。 〔注〕図において,問いに直接関係のない部分等は,省略又は簡略化してある。

  1. ✓ 正答

解説

地上高の規定に注目して誤りを見抜く

高圧架空引込ケーブルの施設基準において、地上高が 3 m とされることはありません。この数値は低圧電線の緩和規定などと混同を誘うひっかけであり、高圧では原則 5 m 以上、交通に支障がない場合などの条件を満たしても 4 m 以上の高さが求められることを根拠に判断します。

ケーブルを安全に保持するちょう架用線の基準

高圧ケーブルを空中に敷設する場合、ケーブル自体の重さや風圧で断線したり垂れ下がったりしないよう、ちょう架用線(メッセンジャーワイヤ)と呼ばれる金属線で吊り下げる必要があります。この施工には以下の細かな数値規定があります。

引張強さと安全率

ちょう架用線には、自重や風圧荷重、積雪荷重などを考慮した合成荷重が加わります。これに対し、断線事故を防ぐため引張強さに対する安全率を 2.5 以上とする必要があります。選択肢イはこの規定に則った正しい記述です。

支持点の間隔

ケーブルをちょう架用線に固定するハンガーの間隔は 0.5 m 以下と定められています。これより間隔が広いと、ケーブル自重によるたわみが大きくなり、外傷を負いやすくなるためです。選択肢ロの 0.5 m という数値は、この制限の最大値であり、適切です。

金属体の接地

ちょう架用線は金属体であるため、漏電時の感電防止や電位の安定のために接地を施す必要があります。高圧受電設備に関連する金属体ですが、この部分には D 種接地工事(100Ω100 \Omega 以下)を施すことが規定されています。選択肢ハも正しい施工内容です。

高圧と低圧で大きく異なる地上高のハードル

この問題の核心である地上高について整理します。電線の高さは、その電線が運ぶ電圧の危険性と、周囲の通行状況によって決まります。

高圧架空電線の場合、以下の基準が適用されます。

  1. 道路を横断する場合:地表上 6 m 以上
  2. 鉄道・軌道を横断する場合:レール面上 5.5 m 以上
  3. その他の場所:地表上 5 m 以上

ただし、高圧架空引込線において「道路を横断しない」「交通に支障がない」といった特定の条件下では、 4 m まで緩和されることがあります。しかし、選択肢ニにある 3 m という高さは、低圧架空引込線において「交通に支障がない場合に緩和される数値(2.5 m 〜 3 m)」に近いものであり、高圧では許容されません。

高圧は低圧に比べて絶縁破壊の距離が長く、わずかな接近が重大な感電事故に直結します。そのため、物理的な距離(高さ)を十分に確保することが保安上の大原則となっています。

施工管理における離隔距離の重要性

この知識は、現場での施工計画(図面のチェック)や竣工検査において非常に重要です。高圧受電設備の引き込み点(受電点)を決定する際、建物の構造上どうしても高さが確保できない場合があります。その際、安易に高さを下げるのではなく、ポールを立てて高さを稼ぐか、あるいは地中引込に変更するといった判断が求められます。

試験において「数値」を問う問題は、単なる暗記以上に「なぜその高さが必要なのか」という安全思想を理解しているかを問うています。高圧を扱う技術者として、人体や車両が触れる可能性のある高さに危険な電圧を存在させないという感覚を養うことが、この問題の教育的意図といえます。

参考リンク

学習の記録にははてなブックマーク!

気づいたこと・覚えたことをコメントにメモしよう