令和8年度上期 学科試験 問32 解説 高圧受電設備の機器
問30から問34までは,下の図に関する問いである。 図は,自家用電気工作物構内の高圧受電設備及び低圧動力設備を表した図である。 この図に関する各問いには,4通りの答え(イ,ロ,ハ,ニ)が書いてある。それぞれの問いに対して,答えを1つ選びなさい。 〔注〕図において,問いに直接関係のない部分等は,省略又は簡略化してある。
- イ
- ロ
- ハ ✓ 正答
- ニ
解説
避雷器(LA)の施設に関する法的な設置基準と、実際の結線における機器構成の整合性を確認することで正解を導き出せます。具体的には、契約電力 以上の受電設備における設置義務の有無、および避雷器を回路から切り離すために用いる機器が適切かどうかを判断します。
避雷器の設置が義務付けられる条件と推奨されるケース
電気設備の技術基準の解釈(第37条)により、高圧および特別高圧の受電設備において、避雷器を施設しなければならない場所が定められています。
まず、受電電力の容量が 以上の需要場所の引込口には、避雷器の設置が義務付けられています。これが選択肢ニの記述です。一方で、容量が 未満であっても、雷害が多い地域であったり、周囲に高い建物がなく架空電線路から直接雷の影響を受けやすい場所では、機器保護の観点から避雷器を施設することが強く推奨されます。これが選択肢イの考え方です。
また、選択肢ロにあるように、引込口のケーブルが非常に長い場合は、ケーブルの静電容量による反射電圧の上昇などでサージ電圧が増幅されることがあります。このため、引込口だけでなく、保護対象であるトランスや遮断器などの主遮断装置に近接した場所にも避雷器を追加設置することが望ましいとされています。
避雷器の保守用スイッチにヒューズは不要
選択肢ハにある「限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器(LBS)」を避雷器の一次側に設置するという記述は、実務上の構成として不適切です。
避雷器は、雷による異常高電圧(サージ)が発生した際に、そのエネルギーを大地に逃がす役割を持っています。避雷器自体を点検や交換のために電路から切り離す必要がある場合は、一般的に断路器(DS)や、ジスコン棒で操作するタイプの切換スイッチが用いられます。
ここで、限流ヒューズを用いる必要がない理由は以下の通りです。
- 避雷器は負荷ではない:限流ヒューズは、回路の短絡事故などから下位の機器を保護するために設置するものです。避雷器は通常時には電流が流れない装置であり、避雷器自体を保護するためにヒューズを介在させるメリットがありません。
- サージ電流への耐性:避雷器には数千アンペアの大きな雷サージ電流が流れます。もしここに限流ヒューズがあると、雷が落ちた瞬間にヒューズが溶断してしまい、避雷器としての機能を果たせなくなる恐れがあります。
したがって、避雷器の保守・切り離しを目的として、わざわざヒューズ付の負荷開閉器を設置することはありません。
不適切な記述を見極める思考プロセス
この問題を解く際は、以下の3つのステップで選択肢を吟味します。
まず、数字のルールを確認します。「」という基準は避雷器の設置義務における重要なキーワードです。これに言及している選択肢イとニは、法規と実情に即した正しい記述であると判断できます。
次に、設置場所の物理的な特性を考えます。選択肢ロの「長いケーブル」という条件は、電圧反射によるサージ増幅のリスクを示唆しており、技術的な妥当性があります。
最後に、機器の組み合わせの不自然さを探します。選択肢ハの「避雷器」と「限流ヒューズ付高圧交流負荷開閉器(LBS)」の組み合わせは、電気図面(単線結線図)を思い浮かべたときに、本来トランスや高圧コンデンサの保護に使われる構成です。避雷器の一次側には通常、何も置かないか、せいぜい断路器を置くだけであることを知っていれば、ハが誤りであると確信できます。
現場で役立つ避雷器の知識
避雷器は受電設備の最前線で高価な変圧器や遮断器を雷から守る「防波堤」のような存在です。試験対策としての知識だけでなく、実際の設備管理においても、避雷器が正しく接地されているか、また劣化表示が出ていないかを確認することは非常に重要です。
特に近年は、気候変動の影響で局地的な激しい雷が増えています。法的な義務がない 未満の設備であっても、避雷器の有無が事故時の復旧コストに直結するため、設計・施工の段階で適切な選定と配置が求められます。この問題は、単なる法規の暗記ではなく、機器の役割と接続の合理性を理解しているかを問う良問といえます。