平成21年度 秋期 ITパスポート試験 問31 解説 インシデント管理
サービスデスクがシステムの利用者から障害の連絡を受けた際の対応として,インシデント管理の観点から適切なものはどれか。
- ア 再発防止を目的とした根本的解決を,復旧に優先して実施する。
- イ システム利用者の業務の継続を優先し,既知の回避策があれば,まずそれを伝える。 ✓ 正答
- ウ 障害対処の進捗状況の報告は,連絡を受けた先だけに対して行う。
- エ 障害の程度や内容を判断し,適切な連絡先を紹介する。
解説
この問題は、サービスデスクが担う役割の優先順位を理解しているかが問われています。インシデント管理の目的は「サービスの迅速な復旧」にあるため、根本的な原因追究や複雑な報告よりも、まずは利用者が業務を止めないことを最優先する選択肢を選びます。
サービスデスクが最優先すべきこと
インシデント管理における最大のミッションは、発生した障害の影響を最小限に抑え、通常のサービス運用にいち早く戻すことです。そのためには、システムが完全に直っていなくても、代替手段(ワークアラウンド)があるならそれを提示して、利用者の業務を継続させることが正解となります。
なぜ他の選択肢は不適切なのか
各選択肢には、サービスデスクの本来の目的とは異なる考え方が含まれています。
アの「再発防止を目的とした根本的解決を、復旧に優先する」というのは、インシデント管理ではなく問題管理の領域です。根本解決は時間がかかることが多いため、これを優先するといつまでもシステムが使えない状態が続いてしまいます。
ウの「連絡を受けた先だけに対して行う」というのは不親切です。組織的に動くサービスデスクでは、影響を受ける関係者やステークホルダーに対して、適切な範囲で進捗を共有する必要があります。
エの「適切な連絡先を紹介する」ことは、たらい回しに近い対応です。サービスデスクは「単なる窓口」ではなく、「障害対応の最初の責任者」として機能するべき場所です。自分たちで解決を試みたり、適切な情報を案内したりすることが求められます。
実務現場におけるサービスデスクの役割
この問題の教育的意図は、利用者の視点に立ったサービス提供を理解することにあります。ITパスポートで問われるサービス管理の知識は、単なる暗記ではなく、現場でどのような優先順位で動くべきかという行動指針そのものです。
例えば、社内システムでログインができない障害が発生したとします。その際、バックエンドで何が起きているか(データベースの不整合など)を深く調査するよりも先に、まずは「ブラウザのキャッシュをクリアして再起動してください」といった回避策を提示することが求められます。この「まず止まっている業務を動かす」という姿勢こそが、ITサービスマネジメント(ITSM)の基本理念です。