平成21年度 秋期 ITパスポート試験 問43 解説 ソフトウェア導入作業
新しい業務ソフトウェアの開発が完了し,実現環境へ導入することになった。当該ソフトウェアの導入時に必要な作業として,適切なものはどれか。
- 業務実施状況監視やバッチ処理投入などに必要な運用コストの見積り
- ディスク容量など,必要なハードウェア資源の確保 ✓ 正答
- 当該ソフトウェアで実現する機能の決定
- 当該ソフトウェアの開発工数の見積り
解説
この問題は、システム開発の工程におけるフェーズの区別ができているかを問うています。正解を導くための判断基準は、その作業が「開発中に行うこと」なのか「導入時(本番運用開始直前)に行うこと」なのかという時間軸の整理です。
導入直前に求められるインフラの準備
ソフトウェアを実際に動かす環境へ移行する際には、そのソフトウェアが正常に動作するための物理的な受け皿を用意する必要があります。これをシステムリソースの確保と呼びます。
具体的には、プログラムが保存されるストレージ(ディスク容量)、計算処理を行うためのCPU、そして一時的なデータを保持するメモリなどが挙げられます。ソフトウェアを作っただけではシステムは動きません。そのソフトウェアが要求するスペックを満たすサーバーやネットワーク環境が準備されて初めて、ソフトウェアを本番環境へ配置し、稼働させることができます。
開発工程と導入工程の切り分け
選択肢を検討する際は、システム開発ライフサイクル(SDLC)のどこに位置する作業かを考えると迷いがなくなります。
・ディスク容量など、必要なハードウェア資源の確保 これは実装されたソフトウェアを動かすための最終準備であり、導入工程の作業です。
・業務実施状況監視やバッチ処理投入などに必要な運用コストの見積り これは運用開始後のランニングコストの話です。導入前に行う運用設計の段階では必要ですが、ソフトウェアを導入する(インストールして配置する)作業そのものとは別の準備プロセスとなります。
・当該ソフトウェアで実現する機能の決定 これは開発の最上流である「要件定義」で行う作業です。導入段階ではすでに機能は確定し、実装済みである必要があります。
・当該ソフトウェアの開発工数の見積り これは開発プロジェクトの計画段階で行う作業です。開発が完了した時点では、すでに過去の作業となっています。
このように、各選択肢がプロジェクトの「企画・計画・設計・開発・導入・運用」のどのフェーズにあるかを当てはめていくのが、この問題を解くための思考の定石です。
実務現場におけるシステム導入の重要性
この問題が意図しているのは、システム開発が「プログラムを書いて終わり」ではないという視点です。実務の現場では、優れたソフトウェアを開発しても、それを動かすインフラのキャパシティ(容量や処理能力)が不足していれば、システムはすぐにダウンしてしまいます。
例えば、開発環境では快適に動いていたシステムが、実際の業務で想定される大量のデータを取り扱うようになった途端、ディスクが溢れて停止したり、メモリ不足で画面が固まったりすることは珍しくありません。そのため、導入前にハードウェア資源が適切に確保されているかを確認する「リソース管理」の視点は、ITエンジニアや情報システム部門の担当者にとって必須の知識となります。開発という創造的な作業と、導入・運用という堅実な準備作業の両方を意識できることが、ITパスポートが目指すビジネスIT人材の第一歩となります。