平成21年度 秋期 ITパスポート試験 問42 解説 ITサービスマネジメント
ITサービスマネジメントを説明したものはどれか。
- ITに関するサービスを提供する企業が,顧客の要求事項を満たすために,運営管理されたサービスを効果的に提供すること ✓ 正答
- ITに関する新製品や新サービス,新制度について,事業活動として実現する可能性を検証すること
- ITを活用して,組織の中にある過去の経験から得られた知識を整理・管理し,社員が共有することによって効率的にサービスを提供すること
- 企業が販売しているITに関するサービスについて,市場占有率と業界成長率を図に表し,その位置関係からサービスの在り方について戦略を立てること
解説
ITサービスマネジメントを正しく見分けるポイント
この問題は、ITサービスマネジメントという専門用語が持つ「顧客志向」と「継続的な運用・管理」という2つのキーワードに注目することで、他の選択肢と明確に区別できます。「ITを活用した何か」という広義の言葉に惑わされず、サービスを適切に提供し続ける活動を指す選択肢を選びましょう。
ITサービスマネジメントの本質
ITサービスマネジメント(ITSM)は、IT部門やITベンダーが、顧客にとって価値のあるITサービスを適切に設計し、提供し、そして常に改善し続けるための一連の活動を指します。
重要なのは、単にコンピューターを動かしているだけでは不十分だという点です。顧客が「何を求めているか(要求事項)」を把握し、それを満たすために計画を立て、手順を整え、万が一の障害にも備えるという、管理されたプロセス(仕組み)があることが不可欠です。これらを体系的にまとめたフレームワークとして、ITIL(アイティル)という手法が世界的に広く知られています。
なぜ他の選択肢は間違いなのか
この問題では、似たようなIT用語と混同しないことが正答への近道です。
選択肢にある他の用語は、以下のプロセスを表しています。
- ITに関する新製品や新サービスの実現可能性を検証する活動は、フィジビリティスタディ(実現可能性調査)と呼ばれます。新しいビジネスを始める前に、「これは本当に技術的・経済的に可能なのか?」を確認する、企画段階の作業です。
- 組織内の知識を整理・管理して共有する活動は、ナレッジマネジメントと呼ばれます。個人のスキルや経験を形式化し、会社全体の生産性を上げるために活用する手法です。
- 市場占有率と業界成長率から戦略を立てる活動は、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)です。製品の売れ行きや市場環境から、どの事業に投資し、どの事業から撤退すべきかを判断する経営分析手法の一つです。
試験では「サービスを提供する」「知識を共有する」「事業の優先順位を決める」といったキーワードから、それぞれの定義を瞬時に連想できるかどうかが問われます。
現場で求められる役割
ITサービスマネジメントは、企業のIT部門やシステム開発会社において、最も日常的かつ重要な業務です。システムを導入した後に、ユーザーから「動作が遅い」「この機能が使いにくい」といった意見が出ることは珍しくありません。
そのようなとき、場当たり的に対応するのではなく、サービスレベル管理(SLA:どの程度のサービス水準を保証するか)や、インシデント管理(障害発生時にどう対応するか)、変更管理(システムを更新する際に不具合が出ないように調整する)といった手順を整えておく必要があります。これらを計画的に行うことは、顧客満足度を維持し、組織の信頼性を守るための「防波堤」としての役割を果たしています。この問題を通じて、ITの仕事は「作って終わり」ではなく「運用し、改善し続けること」が本質であるという視点を養いましょう。