平成21年度 春期 ITパスポート試験 問51 解説 ソフトウェア開発の委託
ソフトウェア開発を請負契約で外部委託するときに,発注側が行わなければならないことはどれか。
- ア 契約前の作業着手の指示
- イ 作業者名簿の提出の要求
- ウ 作業場所や使用するコンピュータの手配
- エ 成果物一覧や納期の提示 ✓ 正答
解説
成果物の内容を定義することが請負契約の要
請負契約における発注者の役割は、完成させるべき目的物(成果物)の内容、品質、および納期の期限を明確に提示することです。請負契約とは「仕事を完成させること」に対して報酬を支払う契約であるため、何を、いつまでに完成させるかを合意することが契約の出発点となります。
請負契約と派遣契約の境界線
この問題で重要なのは、請負契約と労働者派遣契約の性質の違いを理解することです。
請負契約では、受託側(ベンダー)が自らの裁量で作業者や作業場所を管理します。発注者が作業者に対して直接指示を出したり、特定の作業場所を強要したりすることは、偽装請負とみなされるリスクがあるため厳禁です。
- ア:契約前に着手を指示することは、契約関係が未成立の段階での強制労働に近い行為であり、不適切です。
- イ:作業者名簿の提出は、セキュリティ要件が特に厳しいプロジェクトで求められる場合もありますが、本質的に請負契約の定義そのものではありません。
- ウ:作業場所や使用するコンピュータを支給するのは派遣契約によく見られる形態です。請負契約では、受託側が自前で環境を用意して成果物を納品するのが基本原則です。
なぜ成果物と納期が重要なのか
請負契約において、発注者は成果物が完成したかどうかの判断基準(検収基準)を持つ必要があります。もし成果物一覧や納期が曖昧であれば、契約期間の終了時に「何をもって完成とするのか」「報酬はいつ支払うのか」というトラブルに発展します。
ITプロジェクトでは、要件定義書や設計書、ソースコード、テスト仕様書などが成果物として定義されます。これらをあらかじめリストアップし、それぞれの納入期限を定めることで、プロジェクトの進捗管理が初めて可能になります。この問題は、発注者として契約の責任を果たすための「要件定義の重要性」を問うているといえます。
実務における契約管理の視点
実務の現場では、この知識はベンダーコントロールに直結します。例えば「いつまでに追加の機能をつけてほしい」とベンダーに口頭で指示を出すと、それは請負の枠を超えて発注側の指揮命令が入っているとみなされかねません。
正しい手順としては、変更が必要な場合は契約範囲を見直し、成果物一覧や納期に関する変更合意書を改めて締結することです。試験問題を通じて、ITプロジェクトの契約形態を正しく理解し、法律やガイドラインに則った適正な取引を行うことの重要性を学ぶことができます。