平成22年度 秋期 ITパスポート試験 問34 解説 プロトタイピング
システム開発を上流工程から下流工程まで順番に進めるとき, システムの利用者に よるテストの段階で大幅な手戻りが生じることがある。それを防ぐために, 早い段階 で試作ソフトウェアを作成して利用者の要求事項を明確にする方法はどれか。
- ア オブジェクト指向
- イ スパイラルモデル
- ウ データ中心アプローチ
- エ プロトタイピング ✓ 正答
解説
プロトタイピングという解決策
この問題は、キーワードの組み合わせで即座に正解を導き出せます。「早い段階で試作(プロトタイプ)を作成し、利用者の要求を確認する」という記述があれば、それは迷わず「プロトタイピング」を選びます。システム開発の現場では、完成後に「思っていたものと違う」という手戻りが最もコストのかかる失敗であるため、この手法は非常に重要です。
試作品で齟齬を防ぐ考え方
システム開発における最大のリスクは、開発者と利用者の間にある「イメージのズレ」です。上流工程で決めた要件定義書の内容が、実際に動く画面や操作感と一致しているか、利用者は完成するまで判断しにくいという問題があります。
プロトタイピングは、開発の初期段階で外観や主要な機能だけを実装した「試作品」を作成する手法です。これを実際に見せたり触ってもらったりすることで、利用者は「この機能は使いにくい」「ここにはもっと別の情報を表示したい」といった具体的な意見を出せるようになります。
このように、完成品を作る前に動く形のものを見せて合意形成を図ることで、後戻りのできない開発終盤での「そんなはずではなかった」という事態を未然に防ぐことができます。
各選択肢の用語とその役割
試験対策としては、正解以外の用語がどのような手法を指しているのか整理しておくと、他の問題にも対応できるようになります。
アのオブジェクト指向は、データとその操作手順をひとまとめにした「オブジェクト」という単位でシステムを設計・構築する考え方です。プログラムの再利用性やメンテナンス性を高めるために使われます。
イのスパイラルモデルは、システムをいくつかの機能に分割し、設計からテストまでの工程を小さなサイクルで何度も繰り返しながら、徐々に完成度を高めていく開発手法です。プロトタイピングは手法の一部として組み込まれることはありますが、スパイラルモデルという名称は開発の進め方そのものを指します。
ウのデータ中心アプローチ(DOA)は、システムを構成する機能ではなく「データ」に着目して設計する考え方です。業務が変化してもデータそのものは安定していることが多いため、長期的に利用できるシステムを作るための手法です。
開発現場での活用シーン
このプロトタイピングの考え方は、現代のIT現場でより柔軟な形で活用されています。例えば、アジャイル開発では、短い期間で動くソフトウェアをリリースし、フィードバックを得ながら開発を継続します。また、UI/UXデザインの現場では、実際にコードを書く前にツールを使って画面の動きを再現した「モックアップ」を作成し、利用体験を検証することも一般的です。
この問題の本質は「言葉による抽象的な合意」よりも「目に見える形での具体的な合意」の方が、プロジェクトの成功確率を確実に高めるという点にあります。試験では「早い段階で試作」というフレーズを見たら、すかさずプロトタイピングと結びつけられるようにしておきましょう。