平成22年度 春期 ITパスポート試験 問6 解説 損益分岐点分析
問6 企業の売上高,固定費及び変動費が分かっているとき,損益分岐点比率,損益分岐 点売上高及び変動費率は,それぞれ次の式で求めることができる。これらの式から言 える適切な記述はどれか。 損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 売上高 損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ (1 - 変動費率) 変動費率 = 変動費 ÷ 売上高
- ア 売上に占める固定費が大きいほど,損益分岐点比率は低くなり,利益は増加する。
- イ 損益分岐点比率が高いほど,売上に対する利益は多くなる。
- ウ 損益分岐点比率が低いほど,売上に対する利益は多くなる。 ✓ 正答
- エ 変動費率が高くなれば,損益分岐点比率は低くなり,利益も低下する。
解説
損益分岐点比率から読み解く収益性の判断
この問題は、数式の意味を定性的な関係性に変換できるかを問うています。結論から言えば、損益分岐点比率は「売上のうち、どれだけがコストを回収するために必要か」を示す指標です。この値が小さいほど、コストを回収した後の利益が残りやすいため、収益性が高いと判断できます。
損益分岐点比率の意味
損益分岐点売上高とは、利益がゼロになる売上のことです。この数式を整理すると、以下の関係が見えてきます。
損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 / 売上高
この値が低いということは、現在の売上高に対して、利益がゼロになる売上高(損益分岐点)の割合が小さいことを意味します。例えば、売上高が1,000万円で損益分岐点が500万円なら比率は50%ですが、損益分岐点が200万円であれば比率は20%になります。損益分岐点が低いほど、早い段階で利益が出始めるため、会社経営としては「余裕がある」状態といえます。
この余裕の度合い(安全余裕率)は、1 - 損益分岐点比率 で求められます。つまり、損益分岐点比率が低ければ低いほど、利益が出る余地(安全余裕率)が大きくなるという直感的な理解が重要です。
選択肢の判断プロセス
各選択肢を検討する際、数式に数値を代入して考えるのが最も確実です。
ア:固定費が大きいと、損益分岐点売上高は増加します。結果として損益分岐点比率は高くなり、利益は減少します。 イ:損益分岐点比率が高いということは、利益が出るまでのハードルが高いことを意味します。したがって、利益は少なくなります。 ウ:損益分岐点比率が低いほど、利益が出るための安全圏が広いことを意味するため、利益は多くなります。 エ:変動費率が高くなると、1個あたりの儲け(限界利益)が減るため、固定費を回収するまでの売上が増えます。結果として損益分岐点比率は高くなり、利益は低下します。
このように、各要素がどのように利益に直結するかを論理的に追うことで、消去法に頼らず正解を導き出せます。
経営指標としての活用
ITパスポートでこの知識が問われるのは、システム導入や業務改善が「企業の収益性にどう影響するか」を判断するためです。例えば、システム投資によって「固定費」が増えたとしても、それによって効率化が進み、「変動費率」が劇的に下がれば、結果として損益分岐点が下がり、中長期的な収益性は改善する可能性があります。
単なる計算問題として暗記するのではなく、固定費・変動費・損益分岐点の関係を理解することは、企業の財務体質を評価する経営視点を持つことに繋がります。ITエンジニアであっても、自分が提案するシステムが顧客の損益分岐点にどのような影響を与えるかを意識することは、説得力のある提案を行うための重要なステップです。