平成22年度 春期 ITパスポート試験 問89 解説 WBSの階層構造
Sさんは, 作業分割の図において, システム要件定義などのシステム開発作業全体にかかわるものをサブシステム1, 2, …と同じ階層に記載するように, 先輩から指示を受けた。図のシステム要件定義と同じ階層に記載すべき作業として, 適切なものはどれか。
- ア システム監査 ✓ 正答
- イ システム結合
- ウ ソフトウェア結合
- エ ソフトウェアコード作成及びテスト
解説
この問題は、WBS(作業分解図)における階層構造のルールを理解しているかを問うものです。ポイントは、提示されたシステム要件定義がプロジェクト全体のどの位置付けにあるか、つまり「開発工程の最上位(全体管理・要件)」なのか「特定の機能やモジュールの作業」なのかを見極めることです。
階層構造で見分けるWBSの正体
WBSは、プロジェクトの成果物を細分化して管理するための手法です。この図において、サブシステム1やサブシステム2といった単位で作業が分割されている場合、それらは個別の機能開発を指します。
一方、システム要件定義は、特定のサブシステムだけに閉じた話ではなく、プロジェクト全体が何を目指すのかを決定する、最も上位のプロセスです。したがって、この作業と同じ階層に並ぶべきなのは、同じくプロジェクト全体を俯瞰するような管理的な作業や、開発工程全体にまたがるプロセスとなります。
選択肢を分類して正解を導く
提示された選択肢を、開発の流れと階層の深さで比較してみましょう。
- システム要件定義:開発の最上位(全体要件)
- ア システム監査:システム開発全体の適正性やリスクを評価する全体プロセス(上位概念)
- イ システム結合:複数のサブシステムを繋ぎ合わせる段階(中〜下位工程)
- ウ ソフトウェア結合:プログラムモジュールを組み合わせる段階(下位工程)
- エ ソフトウェアコード作成及びテスト:個別のプログラムを作る段階(最下位工程)
このように整理すると、イ、ウ、エはどれもシステム要件定義が終わった後に実施される具体的な実装やテストのステップであることがわかります。一方で、システム監査は要件定義を含む開発工程全体を対象とする活動であり、これらは図の中で同じ階層(プロジェクト管理や全体プロセス)に配置するのが論理的です。
現場で求められるWBSの組み立て方
試験の問題では「WBSの階層」として問われますが、実務においてこれは「誰が、どの範囲で、何をするか」の責任分解点を示す非常に重要な図面になります。
もしWBSの階層を間違えて作成すると、例えば「サブシステム1の作業」の直下に「プロジェクト全体の進捗管理」のような項目が混ざってしまうことになります。こうなると、サブシステム1が完了したときにプロジェクト全体の管理が終わったのか、それともまだ終わっていないのかが曖昧になり、作業の遅延や抜け漏れを招きます。
教育的な意図として、この問題は「上位概念(方針・計画・監査)」と「下位概念(実装・検証・作成)」を明確に切り分け、作業の粒度を揃えるというWBS作成の鉄則を理解しているかを求めています。階層構造を整理する力は、将来的にプロジェクトマネジメントに関わる際、複雑なタスクを分解・管理するための基礎体力となります。