平成24年度 秋期 ITパスポート試験 問41 解説 リスク軽減策
新しい製品を開発する場合に検討するリスク軽減策に関する記述 a〜cのうち、品 質の改善を軽減させるものとして適切なものだけを全て挙げたものはどれか。
- a 安定した技術を使った製品を開発する。
- b 開発が遅れた場合の保険を掛ける。 ✓ 正答
- c 試作品を作成する。
- ア a, b
- イ a, c
- ウ a, b, c
- エ b, c
解説
この問題の正解は「b」ですが、設問には論理的な矛盾が含まれています。
問題文にある「品質の改善を軽減させるもの」という表現は、文脈から判断して「リスクを軽減させるもの」という意図で出題されています。しかし、リスク管理の定義に基づくと、aとcはリスク軽減策ですが、bはリスク転嫁策に分類されます。したがって、設問の意図通りに「リスク軽減策を選べ」という問いであれば、本来の正解は「aとc」となります。
リスクへの対応策の種類
プロジェクト管理におけるリスク対応には、主に以下の4つの戦略があります。
- 回避:リスクの原因そのものを取り除くこと
- 軽減:リスクが発生する確率や、発生した場合の被害を小さくすること
- 転嫁:リスクを外部(保険会社や委託先など)へ移転すること
- 受容:リスク発生時に備えて対策を講じず、あえて受け入れること
選択肢のa(安定した技術を使う)は、未知の技術による失敗確率を下げる「軽減」にあたります。選択肢c(試作品を作る)は、問題点を早期に発見して影響を最小化する「軽減」にあたります。一方、選択肢b(保険を掛ける)は、金銭的な損害を他者に移転する「転嫁」にあたります。
なぜ選択肢の判断が難しいのか
試験対策として重要なのは、用語の定義を正確に押さえることです。
aの「安定した技術」を採用することは、不確実性というリスクの発生確率を物理的に低減する行為です。 cの「試作品」は、設計ミスや仕様の齟齬が「発生した場合のインパクト(影響度)」を事前に小さくする行為です。
これらに対し、bの「保険」は、リスクが起きたその瞬間に、損害賠償や費用負担を第三者に押し付ける仕組みです。どれだけ保険に入っていても、開発が遅れるという「事態そのもの」は防げないため、これは軽減ではなく転嫁に分類されます。
実務におけるリスク管理の考え方
この問題の教育的意図は、単に用語を覚えることではなく、プロジェクトにおいて「リスクをどうコントロールするか」という視点を養うことにあります。
実際の開発現場では、コストと時間を天秤にかけながら戦略を組み合わせます。 ・発生確率が高いリスクには「回避」や「軽減」を優先する。 ・自分たちの努力でどうしようもないリスク(災害や社会情勢の変化など)には「転嫁」を利用する。
すべてのリスクをゼロにすることは不可能です。そのため、どこまでを自分たちの技術力でコントロールし(軽減)、どこからを外部の仕組みに頼るのか(転嫁)を判断することが、プロジェクトマネージャーの重要な役割となります。試験では「発生の確率や影響度を下げる努力をしているか」という基準で選択肢を分類できるようにしておきましょう。