平成25年度 秋期 ITパスポート試験 問66 解説 マルチコアプロセッサ
マルチコアプロセッサに関する記述のうち,最も適切なものはどれか。
- 1台のPCに複数のマイクロプロセッサを搭載し,各プロセッサで同時に同じ処理を実行することによって,処理結果の信頼性の向上を図ることを目的とする。
- 演算装置の構造とクロック周波数が同じであれば,クアッドコアプロセッサはデュアルコアプロセッサの4倍の処理能力をもつ。
- 処理の負荷に応じて一時的にクロック周波数を高くして高速処理を実現する。
- 一つのCPU内に演算などを行う処理回路を複数個もち,それぞれが同時に別の処理を実行することによって処理能力の向上を図ることを目的とする。 ✓ 正答
解説
マルチコアプロセッサの判断ポイント
マルチコアプロセッサという言葉の通り、「マルチ(多数)」の「コア(核・処理ユニット)」を1つのCPUチップに詰め込んだものを指します。選択肢を絞る際は、その目的が「処理の並列化(高速化)」にあることと、物理的に1つのチップ(CPU)の中に回路が埋め込まれているイメージを持っていることが重要です。他の選択肢との違いは「構成(チップの数)」と「目的(信頼性か、高速化か)」を整理することで確実に見抜けます。
マルチコアとマルチプロセッサの違い
マルチコアプロセッサを理解する上で混同しやすいのが「マルチプロセッサ」という用語です。
マルチコアプロセッサは、1つのCPUパッケージの中に複数の演算回路(コア)を詰め込んでいます。これに対し、マルチプロセッサとは、マザーボード上に物理的に独立したCPUを複数個搭載する構成を指します。
今回の問題の選択肢にあった「1台のPCに複数のマイクロプロセッサを搭載し、信頼性の向上を図る」という記述は、主にマルチプロセッサやデュアルシステムの説明です。特に同じ処理を複数のプロセッサで同時に実行して結果を照合することで信頼性を高めるのは、高い可用性が求められるメインフレームやサーバーの仕組みです。一方で、近年のPCやスマホで主流のマルチコアは、限られた消費電力とスペースの中で、いかに効率よく並列処理を行い、全体の処理性能を底上げするかに主眼が置かれています。
性能向上の誤解と技術の限界
選択肢にあった「クロック周波数が同じならコア数が4倍になれば処理能力も4倍になる」という記述が誤りである理由は、並列化には限界があるためです。
例えば、ある計算処理を4分割して4つのコアで実行しようとしても、すべての処理が綺麗に分割できるわけではありません。前の処理が終わるのを待たなければならない「直列的な処理」が含まれる場合、コアを増やしても待ち時間は減りません。これをアムダールの法則と呼びます。単にコア数を増やせば処理能力が比例して伸びるわけではなく、ソフトウェア側も並列処理に対応した設計である必要があるのです。
また、クロック周波数を一時的に引き上げる技術は「ターボ・ブースト」や「CPUブースト」と呼ばれます。これはマルチコアという構造そのものの説明ではなく、特定のコアに負荷がかかった際に一時的にクロックを上げて処理を加速させる「付加機能」です。
なぜこの知識が重要なのか
現代のコンピュータやスマートフォンにおいて、CPUの処理能力向上の歴史は「クロック周波数の競争」から「コア数の競争」へとシフトしました。クロック周波数を上げるだけでは発熱が激しくなりすぎて冷却が追いつかなくなるためです。
ITパスポート試験でこの項目が出題される意図は、単なるスペックの暗記ではなく、現代のコンピュータの性能がどのようなアプローチで支えられているのかという構造を理解させることにあります。システムの導入やスペック選定を行う際、コア数だけを見ればよいのか、あるいは個々のコアの処理性能が重要なのかといった視点は、サーバー選びやPC購入などの実務においても非常に重要な判断基準となります。