ITパスポート試験 / 平成25年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 / 問92
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平成25年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問92 解説 SLAの定義と合意

中間B 会計システムの導入に関する次の記述を読んで,四つの問いに答えよ。 F社の経理部では,ITサービスを行っているG社の会計システム(以下,新システムという)の導入を進めている。経理部では,新システムの稼働後は,G社へ新システムの保守と運用を委託する予定にしており,新システムが引き渡された後のサポート内容について,G社と詳細を詰めることにした。 保守,運用に関するG社の基本サービスは,次のとおりである。 〔保守,運用に関するG社の基本サービス〕 (a) 新システムについての問合せ対応は平日だけで,電子メールで受け付け,電子メールで回答を行う。 (b) 新システムで発生した障害の切分けと,発見されたバグの修正対応を行う。 (c) 新システム運用のサービス提供時間は,平日9:00〜19:00とする。 (d) 新システムで障害が発生した場合は,発生時から9時間以内に復旧を行う。 データのバックアップを日次で行い,1か月分のデータの保管を行う。ディスク障害が発生した場合は,前日までのデータの復旧を保障する。 一方,経理部は,新システムの利用及びサポートについて,G社に対して次の要望をもっている。 〔新システムの利用及びサポートに関する要望〕 (1) 新システムの使用方法の問合せを平日9:00〜18:00の間,電話と電子メールで対応してほしい。 (2) 新システムで障害が発生した場合に対応してほしい。 (3) 新システム稼働後も利便性向上のための新システムの修正を行ってほしい。 (4) 新システムの通常の利用は,平日9:00〜18:00としたい。 (5) 決算などの繁忙期は,夜間,休日なども新システムを利用できるようにして,また問合せにも対応してほしい。

  1. ✓ 正答

解説

中間B 会計システムの導入に関するこの問題は、ITサービスの導入において非常に重要な「SLA(サービスレベル合意書)」に関する知識を問うものです。SLAとは、ITサービス提供者と利用者の間で交わされる、サービスの内容、品質、責任範囲などを明確にした合意書のことです。

サービスレベル合意の要点を見極める

この問題の解き方は、まずITサービス提供者であるG社が提示している「基本サービス」の内容と、サービス利用者であるF社経理部が持っている「要望」の内容を一つずつ比較し、両者の間にどのような認識のずれや、基本サービスではカバーしきれない要望があるかを洗い出すことです。

特に注目すべきは、以下の点です。

  1. サービスの提供時間外の対応(平日夜間、休日):G社の基本サービスは「平日9:00〜19:00」が基本です。しかしF社は「決算などの繁忙期は、夜間、休日なども新システムを利用できるようにして、また問合せにも対応してほしい」と要望しています。これは基本サービスの提供時間外にあたるため、追加費用や特別な合意が必要となる可能性が高いです。

  2. 問合せ方法の変更(電子メールから電話へ):G社の基本サービスは「電子メールで受け付け、電子メールで回答」ですが、F社は「電話と電子メールで対応してほしい」と要望しています。電話対応はより人的コストがかかるため、これも追加サービスとして費用が発生する可能性があります。

  3. システム修正の範囲(バグ修正と利便性向上):G社の基本サービスは「発見されたバグの修正対応」です。一方、F社は「利便性向上のための新システムの修正を行ってほしい」と要望しています。ここがこの問題の最大のポイントです。

    • バグ修正:システムが設計通りに動かない、あるいは誤動作する場合の原因を特定し、修正すること。これは一般的にシステムの「保守」の範囲に含まれ、基本サービス内で対応されることが多いです。
    • 利便性向上のための修正:既存機能の改善、新しい機能の追加、ユーザーインターフェースの変更など、システムをより使いやすく、高性能にするための変更のこと。これらは「機能改善」「追加開発」「改修」などと呼ばれ、通常は基本の保守契約の範囲外であり、別途費用と工数がかかるプロジェクトとして扱われます。

したがって、F社の「利便性向上のための修正」という要望は、G社の基本サービスである「バグ修正」とは異なり、追加費用が発生したり、別途契約が必要になったりする可能性が高いと判断できます。この点を明確に合意しておくことが、後のトラブルを防ぐ上で極めて重要になります。

SLA(サービスレベル合意書)の重要性

今回のケースのように、ITサービスの導入時や運用時に、サービス提供者と利用者との間でサービス内容や品質について認識のずれが生じることは少なくありません。こうした認識のずれを解消し、お互いの期待値を明確にするために作成されるのがSLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意書)です。

SLAでは、単にサービスの内容だけでなく、次のような項目を具体的に定めます。

  • サービス対象範囲: どのシステム、どの機能、どのユーザーまでが対象か。
  • サービス提供時間: いつサービスが利用できるのか、いつサポートが受けられるのか。
  • 障害発生時の対応: 障害の通知方法、復旧目標時間(RTO)、データの復旧時点(RPO)、エスカレーション手順など。
  • 問い合わせ対応: 受付方法(電話、メール)、対応時間、回答目標時間など。
  • 可用性: システムが稼働している割合(例:月間99.9%稼働)。
  • セキュリティ: データ保護やアクセス管理に関する取り決め。
  • 報告義務: 定期的なサービス状況の報告。
  • 責任範囲: サービス提供者と利用者の責任の分界点。
  • 料金体系: 基本料金、追加料金が発生する条件。

これらの項目を事前に詳細に詰めることで、利用者はどのようなサービスが提供されるのかを明確に理解し、提供者は責任を果たすべき範囲を明確にすることができます。SLAの合意は、サービスの品質維持だけでなく、将来的なトラブルを回避し、良好な関係を築くための基盤となります。

この知識が役立つ場面

この問題で問われているSLAの知識は、ITパスポート試験だけでなく、ビジネスの様々な場面で役立ちます。

  • ITシステムの導入・契約時: 自社にITシステムを導入する際、ベンダーとの契約内容を精査する際に、SLAの項目を一つ一つ確認し、自社のニーズと合致しているか、追加費用が発生する可能性がないかを評価できます。
  • クラウドサービスの利用時: IaaS、PaaS、SaaSなどのクラウドサービスを利用する際も、サービス提供者からSLAが提示されます。稼働率の保証、データバックアップのポリシー、サポート体制などを理解し、自社のビジネス要件を満たしているか判断する上で必須の知識です。
  • 社内IT部門の運用改善: 自社内でITサービスを提供している場合でも、社内ユーザーとの間でSLAのような合意を形成することで、IT部門のサービス品質を明確にし、ユーザー満足度を高めることができます。
  • 問題発生時の対応: システム障害やサービス品質に関する問題が発生した際に、SLAに立ち返ることで、どちらの責任範囲か、どのような対応が期待されるかを確認し、迅速かつ適切に対処できます。

特に、「バグ修正」と「機能改善・追加」の違いを理解することは、システム開発や運用における費用対効果を考える上で非常に重要です。システム導入後の「こんなはずではなかった」を防ぐためにも、SLAの概念と具体例をしっかり理解しておきましょう。

参考リンク

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