ITパスポート試験 / 平成25年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 / 問91
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平成25年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問91 解説 SLAの定義と合意

中間B 会計システムの導入に関する次の記述を読んで,四つの問いに答えよ。 F社の経理部では,ITサービスを行っているG社の会計システム(以下,新システムという)の導入を進めている。経理部では,新システムの稼働後は,G社へ新システムの保守と運用を委託する予定にしており,新システムが引き渡された後のサポート内容について,G社と詳細を詰めることにした。 保守,運用に関するG社の基本サービスは,次のとおりである。 〔保守,運用に関するG社の基本サービス〕 (a) 新システムについての問合せ対応は平日だけで,電子メールで受け付け,電子メールで回答を行う。 (b) 新システムで発生した障害の切分けと,発見されたバグの修正対応を行う。 (c) 新システム運用のサービス提供時間は,平日9:00〜19:00とする。 (d) 新システムで障害が発生した場合は,発生時から9時間以内に復旧を行う。 データのバックアップを日次で行い,1か月分のデータの保管を行う。ディスク障害が発生した場合は,前日までのデータの復旧を保障する。 一方,経理部は,新システムの利用及びサポートについて,G社に対して次の要望をもっている。 〔新システムの利用及びサポートに関する要望〕 (1) 新システムの使用方法の問合せを平日9:00〜18:00の間,電話と電子メールで対応してほしい。 (2) 新システムで障害が発生した場合に対応してほしい。 (3) 新システム稼働後も利便性向上のための新システムの修正を行ってほしい。 (4) 新システムの通常の利用は,平日9:00〜18:00としたい。 (5) 決算などの繁忙期は,夜間,休日なども新システムを利用できるようにして,また問合せにも対応してほしい。

  1. ✓ 正答

解説

ITパスポート試験では、ITサービスの導入や運用に関する基礎知識が問われます。この問題は、サービス利用者(F社)の要望と、サービス提供者(G社)の提供する基本サービスを比較し、両者の間にどのようなギャップがあり、特にどの点が重要かを判断する能力を試すものです。

解き方ガイド

F社の要望とG社の基本サービスを一つずつ比較し、両者の間にギャップ(不足しているサービス)がないかを確認します。特に、F社の事業継続に影響を与える可能性のある、重要な要求(例えば、システム利用時間や障害対応、データの保全など)に注目しましょう。

サービスレベル合意(SLA)とは?

本問を理解する上で重要な概念が、**SLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意書)**です。SLAとは、ITサービスの提供者(今回の場合はG社)と利用者(F社)の間で、提供されるサービスの品質レベルについて、具体的な内容を合意した文書のことです。

SLAは、単に契約書というだけでなく、ITサービスが導入された後に「こんなはずではなかった」という利用者側の不満や、提供者側の過剰な期待による負担を防ぐための重要なコミュニケーションツールでもあります。具体的なサービスレベルを数値や条件で明確にすることで、互いの認識を合わせ、スムーズなサービス提供と利用を可能にします。

SLAに合意される項目には、以下のようなものが含まれます。

  • サービス提供時間と曜日(いつ、どのような時間帯にサービスを利用できるか)
  • システムの稼働率(システムがどの程度の割合で正常に稼働することを保証するか)
  • 障害発生時の対応(障害発生時の連絡方法、復旧目標時間、問題解決までのプロセス)
  • サポート体制(問い合わせ窓口の種類、対応時間、応答目標時間)
  • バックアップとリカバリ(データのバックアップ頻度、保管期間、データ復旧の保証レベル)
  • セキュリティ(データ保護やアクセス管理に関する要件)

F社の要望とG社の基本サービスを比較する

それでは、F社の経理部の要望とG社の基本サービスを具体的に比較し、サービスレベルのギャップ(差)を確認していきましょう。

1. 新システムの使用方法の問合せ対応

  • F社の要望(1): 平日9:00〜18:00の間、電話と電子メールで対応してほしい。
  • G社の基本サービス(a): 平日だけで、電子メールで受け付け、電子メールで回答を行う。
  • ギャップ: G社の基本サービスには「電話での問合せ対応」が含まれていません。F社は電話でのサポートも希望しているため、この点はG社と交渉する必要があります。時間帯については、G社のサービス提供時間(c)が9:00~19:00なので、F社の要望時間(9:00~18:00)はカバーされています。

2. 新システムで発生した障害への対応

  • F社の要望(2): 新システムで障害が発生した場合に対応してほしい。
  • G社の基本サービス(b): 障害の切分けと、発見されたバグの修正対応を行う。
  • G社の基本サービス(d): 障害が発生した場合は、発生時から9時間以内に復旧を行う。データのバックアップを日次で行い、1か月分のデータの保管を行う。ディスク障害が発生した場合は、前日までのデータの復旧を保障する。
  • 合致: G社は障害発生時の対応、バグ修正、具体的な復旧目標時間、データバックアップと復旧の保障を提示しており、F社の要望を満たしています。

3. 利便性向上のための修正対応

  • F社の要望(3): 新システム稼働後も利便性向上のための新システムの修正を行ってほしい。
  • G社の基本サービス(b): 発見されたバグの修正対応を行う。
  • ギャップ: 「バグ修正」はシステムの不具合を直すことですが、「利便性向上のための修正」は、システムの機能改善や新機能追加を指します。G社の基本サービスに含まれるのはバグ修正のみであり、機能改善や追加は含まれていません。これらを実施するには、別途契約や費用が必要になる可能性が高いでしょう。

4. 通常のシステム利用時間

  • F社の要望(4): 新システムの通常の利用は、平日9:00〜18:00としたい。
  • G社の基本サービス(c): 新システム運用のサービス提供時間は、平日9:00〜19:00とする。
  • 合致: F社の通常の利用時間はG社のサービス提供時間内に収まっており、問題ありません。

5. 繁忙期のシステム利用と問合せ対応

  • F社の要望(5): 決算などの繁忙期は、夜間、休日なども新システムを利用できるようにして、また問合せにも対応してほしい。
  • G社の基本サービス(a): 問合せ対応は平日だけ
  • G社の基本サービス(c): 新システム運用のサービス提供時間は、平日9:00〜19:00とする。
  • 重大なギャップ: G社の基本サービスは平日日中のみの提供であり、F社が要望する「夜間、休日」のシステム利用や問合せ対応は全く提供されていません。F社にとって決算期は非常に重要な業務期間であり、この要望は業務継続に直結するため、非常に重要度が高いギャップと言えます。

最も重要な交渉ポイント

上記比較の結果、複数のギャップが明らかになりましたが、その中でもF社の要望(5)「決算などの繁忙期は、夜間、休日なども新システムを利用できるようにして、また問合せにも対応してほしい」と、G社の基本サービス(a)および(c)との間のギャップは、F社の業務遂行に深刻な影響を与える可能性のある、根本的なサービス提供時間の違いです。

システムが利用できない、または問題が発生した際に問い合わせができないとなると、F社の決算業務が滞り、大きな損害につながる可能性があります。したがって、この「夜間・休日のシステム利用と問合せ対応」に関する交渉が、最も優先すべき重要事項となります。正解が「エ」であることから、選択肢エは、この「夜間・休日のシステム利用と問合せ対応」に関する内容であったと考えられます。

実社会での活用と教育的意義

この問題は、ITサービスを導入する際に、利用者側が自社の業務要件(いつ、どのようにシステムを使いたいか)を明確にし、それがサービス提供側の「お仕着せ」のサービス内容で本当に満たされるのかを吟味する力の重要性を示しています。

SLAは、システムが稼働した後に「こんなはずではなかった」という事態を防ぐための重要な合意文書です。導入前には、今回のF社のように自社の要望を具体的にリストアップし、提供されるサービスと照らし合わせる「要件定義」と「サービスレベル定義」のステップが不可欠であることを示唆しています。ビジネスの現場では、決算期だけでなく、特定のキャンペーン期間や季節要因によってシステム利用状況が大きく変動することがあります。そうした自社のビジネス特性を理解し、それに合わせたITサービスを設計・契約する能力は、ITパスポートで問われる基本的なビジネススキルの一つです。

参考リンク

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