平成26年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問88 解説 アローダイアグラム
機械メーカのS社では,製品Xに組み込むソフトウェア(以下,Xソフトという)の開発作業A~Hを表1のように計画した。ここで,前作業とは当該作業を開始する前に終了していなければならない作業のことであり,各作業は前作業が終了すればすぐに開始する。各作業に掛かった費用は,各作業完了時に計上する。 表1 Xソフト開発の作業 (表の内容は省略) 図1は,表1に基づいて作成したアローダイアグラムである。 (図の内容は省略)
- ア
- イ ✓ 正答
- ウ
- エ
解説
アローダイアグラムにおけるクリティカルパスの特定は、開始点から終了点まで、各作業の所要日数を足し合わせて、最も時間がかかる経路(最長経路)を見つけることで解決します。
まず、図1から考えられるすべての経路と、その合計日数を算出します。
- A → B → C → H:2 + 3 + 4 + 7 = 16日
- A → D → E → H:2 + 4 + 5 + 7 = 18日
- A → D → (ダミー) → G → H:2 + 4 + 0 + 6 + 7 = 19日
- A → F → G → H:2 + 2 + 6 + 7 = 17日
計算の結果、最も日数がかかるのは経路3の19日であることが分かります。したがって、この開発プロジェクト全体の最短工期は19日となります。
クリティカルパスとは何か
クリティカルパスとは、プロジェクト全体の工期を決定づける「最も時間のかかる経路」のことです。この経路上の作業に遅延が発生すると、プロジェクト全体の完了予定日がそのまま後ろ倒しになります。逆に、クリティカルパス以外の作業には多少の余裕(フロート)があり、ある程度遅れても全体には影響しません。
この考え方の基礎となっている手法をPERT(Program Evaluation and Review Technique)と呼びます。
実務における活用
この知識は、ITエンジニアやプロジェクトマネージャがスケジュールを管理する際に不可欠です。例えば、納品日が決まっているプロジェクトにおいて、どこに人員を集中させるべきかを判断する材料になります。クリティカルパス上の作業はボトルネックであるため、ここに優秀な人員を配置したり、タスクを並列化して短縮できないか検討したりすることが、効率的なプロジェクト運営の鍵となります。
また、ダミー作業(点線の矢印)は、実務上の順序関係を正確に表現するために使われます。本問のケースでは、作業Gが「DとFの両方が終わらないと開始できない」という制約を表現するためにダミーが使われています。このように、複雑なタスク間の依存関係を可視化することで、見落としのない計画策定が可能になります。
教育的意図
この問題は、単なる計算能力だけでなく、以下の三点を正しく理解しているかを問うています。
- 順序の依存関係を正確に読み取れるか
- ダミー作業という、所要日数0の制約事項を計算に組み込めるか
- 複数の経路がある中で、最短工期を律するのは最大値であると認識しているか
これらの概念を理解することは、将来、開発の現場でスケジュールが遅延しそうな際に「どのタスクにリソースを投入すれば工期を挽回できるか」を論理的に判断する思考の基礎となります。