平成27年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問36 解説 システム監査人の職業倫理
システム監査人の職業倫理に照らしてふさわしくない行為はどれか。
- 監査役による業務監査における指摘事項の確認
- 成功報酬契約による監査 ✓ 正答
- 専門知識を持った他の監査人との共同監査
- 前年実施した別の監査人による監査報告内容の確認
解説
システム監査人に求められる最も重要な原則である「独立性」を軸に、報酬形態がその客観性にどのような悪影響を及ぼすかを判断します。「成果が出れば報酬が増える」という仕組みは、監査結果を歪めるインセンティブになるため、職業倫理として禁止されています。
監査人における独立性の重要性
システム監査とは、第三者の立場で組織の情報システムが適切に管理・運営されているかを客観的に評価する活動です。監査人が正しく機能するためには、監査対象となる組織や利害関係者から完全に独立している必要があります。
もし成功報酬制を導入した場合、監査人は「報酬を増やすために、わざと問題を指摘する」あるいは「報酬を受け取るために、問題を見逃して良好な評価を出す」といった、組織の利益や自身の報酬を優先した行動をとる誘惑に駆られます。これでは、中立公正な立場で事実を調査するという監査の本質が損なわれてしまいます。
職業倫理が守るべき境界線
監査人は「金銭的、精神的、あるいは個人的な利害関係」から切り離されていなければなりません。今回の問題にある他の選択肢と比較すると、その理由がより明確になります。
監査役との連携、専門家との共同監査、前任者の報告書確認といった行為は、いずれも「監査の品質を高める」ための専門的かつ健全なプロセスです。これらは、監査という業務をより正確で多角的な視点で行うために推奨される行動であり、監査人の独立性を脅かすものではありません。
ITパスポート試験でこの知識が問われるのは、単なるルールの暗記ではなく、組織の中で「役割(役割分担)」を理解しているかを問うためです。システム監査人のような「チェックする側」の人間が、どうすれば公平性を保てるのかという構造を理解しておけば、実務でも適切なガバナンス環境を構築するためのヒントになります。
なぜ成功報酬が問題視されるのか
ビジネスの現場において「成果報酬」は非常に強力なツールですが、監査の現場においては「歪んだインセンティブ」として働きます。この問題の教育的意図は、どのような組織の構成であっても「利益相反」が生じない仕組み作りが重要であることを学ぶ点にあります。監査という業務においては、報酬をあらかじめ決めておく固定報酬制を採用することが、専門家としての信頼を維持するための前提条件となります。