平成27年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問29 解説 ナレッジマネジメント
X社では,工場で長期間排水処理を担当してきた社員の経験やノウハウを文書化し て蓄積することで,日常の排水処理業務に対応するとともに,新たな処理設備の設 計に活かしている。この事例の考え方として,適切なものはどれか。
- ア ERP
- イ SFA
- ウ サプライチェーンマネジメント
- エ ナレッジマネジメント ✓ 正答
解説
この問題は、キーワードの言い換えを見抜くことで正解にたどり着けます。「個人の経験やノウハウ」を「組織全体で共有・活用する」というフレーズが出てきたら、迷わずナレッジマネジメントを選びましょう。
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントは、個人の持つ知識(ナレッジ)を組織として共有し、その知恵を最大限に引き出すことで業務の効率化やイノベーションにつなげる経営手法です。
知識には大きく分けて2種類あります。 ・形式知:文書や図面、マニュアルのように、誰が見ても理解できるように言語化・形式化された知識。 ・暗黙知:長年の経験や勘、コツのように、個人の頭の中にあって言葉にしにくい知識。
今回の事例では、長年排水処理を担当してきたベテランの「経験やノウハウ」という暗黙知を、「文書化」することで形式知に変換し、他の社員や設備設計に活用しています。これはまさにナレッジマネジメントの理想的なプロセスといえます。
その他の選択肢が指すもの
ITパスポート試験では、似たようなカタカナ用語が多く登場します。今回の選択肢を整理しておきましょう。
・ERP(Enterprise Resource Planning):企業全体のリソース(人・モノ・金・情報)を統合的に管理し、効率化を図るための基幹業務システムのことです。 ・SFA(Sales Force Automation):営業活動を効率化・自動化するためのシステムです。顧客情報や商談の進捗状況を共有することで、チーム全体の売上向上を狙います。 ・サプライチェーンマネジメント(SCM):原材料の調達から製造、配送、販売に至るまでの一連の流れ(供給連鎖)を最適化し、在庫削減やコストダウンを目指す手法です。
実務における意義
企業にとって「ベテランの退職」は大きなリスクです。もしマニュアルがなければ、その人が培った技術やノウハウが失われ、排水処理のような専門的な業務で重大なトラブルが発生するかもしれません。
ナレッジマネジメントを導入することで、以下のメリットが生まれます。
- 教育コストの削減:蓄積されたマニュアルを基に、新人の育成を効率化できます。
- 業務品質の均一化:個人のスキル差に依存せず、誰が担当しても一定の品質を維持できます。
- 継続的な改善:蓄積されたノウハウに新しい気づきを加えることで、さらに優れた業務プロセスを生み出せます。
ITパスポートでは、このような「技術や仕組みが経営課題をどう解決するか」という視点が非常に重視されます。用語の暗記だけでなく、自分の職場や身近な組織に当てはめて考える習慣をつけると、応用力が身につきます。