平成28年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問11 解説 キャッシュフロー
キャッシュフロー計算書において, キャッシュフローの減少要因となるものはどれか。
- ア 売掛金の増加 ✓ 正答
- イ 減価償却費の増加
- ウ 在庫の減少
- エ 短期借入金の増加
解説
キャッシュフロー計算書(C/F)における「キャッシュの増減」は、現金の入り(収入)と出(支出)のみを基準に考えます。売掛金や在庫などの「営業活動によるキャッシュフロー」を問う問題では、その変化が「現金を手元に入れたか、あるいは外部に出て行ったか」という直感的な判断で解くことができます。
売掛金の増加がキャッシュフローを減らす理由
キャッシュフロー計算書において、売掛金の増加が減少要因となる理由は「売上は上がっているものの、現金はまだ受け取っていないから」です。
企業会計では、商品を引き渡した時点で売上を計上する「発生主義」を採用しています。しかし、代金の回収は後日になることが一般的であり、その未回収分が「売掛金」として資産計上されます。つまり、帳簿上は利益が出ていても、手元の現金は増えていません。むしろ、売掛金の残高が増えるということは、それだけ「回収待ちの現金を立て替えている状態」であり、キャッシュフロー全体で見ればマイナス要因として扱われます。
各選択肢の考え方
問題の選択肢を「現金が増える動きか、減る動きか」という視点で分類すると整理しやすくなります。
・売掛金の増加(ア):正解。売ったが代金を受け取っていないため、キャッシュは増えない(実質的な流出)。 ・減価償却費の増加(イ):キャッシュの減少を伴わない費用です。利益計算上はマイナスされますが、現金は減らないため、キャッシュフロー計算書では加算調整(プラス)されます。 ・在庫の減少(ウ):在庫が減るということは、売れたことを意味します。商品が売れて現金回収が進むため、キャッシュフローの増加要因となります。 ・短期借入金の増加(エ):銀行から現金を借り入れるため、手元の現金は増加します。これは財務活動によるキャッシュフローの増加要因です。
経営分析におけるキャッシュフローの意義
ITパスポートでこの知識を問う背景には、利益が出ているのに倒産してしまう「黒字倒産」の仕組みを理解させるという教育的意図があります。
システム開発の受託会社などを例に挙げると、数ヶ月にわたる大規模プロジェクトでは、開発費用(人件費やサーバー費用)を先行して支払う必要があります。その間、売上を計上しても入金がなければキャッシュは枯渇します。ITマネジメントの観点では、単にプロジェクトの利益率を追うだけでなく、売掛金の回収サイクルや支払いタイミングを管理し、会社として支払能力を維持する(キャッシュを回す)能力が不可欠です。
この問題の理解は、将来的に経営企画や管理部門、あるいはベンチャー企業の経営管理などに携わる際に、帳簿上の数字(利益)と実際の財布の中身(キャッシュ)を区別するための重要なリテラシーとなります。