平成28年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問25 解説 企業の組織形態
図によって表される企業の組織形態はどれか。
- ア 事業部制組織
- イ 社内ベンチャ組織
- ウ 職能別組織 ✓ 正答
- エ マトリックス組織
解説
図に示されているのは、社長の直下に「研究開発」「製造」「販売」「総務・人事」「経理・財務」といった、企業活動に必要な機能ごとの部門が並列に配置されている組織形態です。このように、企業をその機能(職能)によって部門分けする組織形態を「職能別組織」と呼びます。したがって、正解はウとなります。
職能別組織とは
職能別組織は、企業を構成する基本的な機能、例えば製造、販売、研究開発、経理、人事といった職能別に部門を組織する形態です。トップである社長が全体の指揮を執り、各職能部門がそれぞれの専門業務を遂行します。
職能別組織のメリット
この組織形態には、以下のようなメリットがあります。
- 専門性の向上と効率化: 各部門が特定の機能に特化することで、専門知識や技術が深まり、効率的な業務遂行が可能になります。類似業務が集中するため、ノウハウの蓄積や標準化も進みやすいです。
- 一貫した方針の徹底: 社長が全職能部門を直接統括するため、企業全体としての方針や戦略を一貫して展開しやすいという特徴があります。
- 管理のしやすさ: 中小企業や、比較的シンプルな製品・サービスを扱う企業においては、トップの目が全体に行き届きやすく、管理しやすい構造です。
職能別組織のデメリット
一方で、以下のようなデメリットも存在します。
- セクショナリズムの発生: 各部門が自身の職能に特化しすぎるあまり、部門間の連携が不足し、「縦割り」になりがちです。これにより、部門間の対立や調整に時間がかかり、全体最適が阻害されることがあります。
- 環境変化への対応の遅れ: 部門間の調整が遅れると、市場の変化や顧客の多様なニーズへの対応が遅れる可能性があります。
- ゼネラリスト育成の難しさ: 特定の職能に特化した人材は育ちやすいですが、複数の職能を横断的に理解し、全体を統括できる経営幹部(ゼネラリスト)が育ちにくい傾向があります。
- トップ層への負担集中: 組織が大規模になると、社長がすべての職能部門に責任を持つため、意思決定の負担が非常に大きくなります。
その他の組織形態との比較
- ア 事業部制組織: 製品別、地域別、顧客別など、特定の事業単位で独立した部門(事業部)を設置する形態です。各事業部内に製造、販売、経理などの機能が包括されており、独立採算制を採ることが多いです。職能別組織が「機能」で分割するのに対し、事業部制組織は「事業」で分割します。
- イ 社内ベンチャ組織: 既存の企業内に、新規事業の創出や特定の課題解決を目的として、独立性の高い組織(プロジェクトチームなど)を設置するものです。これは特定の組織形態というよりも、既存組織を活性化させるための手法の一つといえます。
- エ マトリックス組織: 職能別組織と事業部制組織などの複数の組織形態を組み合わせたものです。従業員は、職能部門のリーダーと、特定のプロジェクトや事業のリーダーというように、複数の上司を持つことになります。専門性と柔軟性を両立させることを目指しますが、指揮命令系統が複雑になるという課題もあります。
この知識が役立つ場面
ITパスポート試験で企業の組織形態について問われるのは、情報システムが企業活動をどのように支援するかを理解する上で不可欠だからです。例えば、職能別組織では各部門が独自のシステムを導入しがちで、部門間の情報連携が課題となることがあります。この課題を解決するために、全社的な情報を統合管理するERP(Enterprise Resource Planning)のようなシステムが有効な場合がある、といった形で、組織構造の理解は情報システム戦略の立案にもつながる重要な基礎知識となります。どのような組織形態が自社に最適か、そしてその組織形態を情報システムがどのように効率化し、強化できるかを考える際に、これらの知識が役立ちます。