平成28年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問29 解説 コンプライアンス
コンプライアンスの取組み強化活動の事例として, 最も適切なものはどれか。
- ア 従業員の社会貢献活動を支援するプログラムを拡充した。
- イ 遵守すべき法律やルールについて従業員に教育を行った。 ✓ 正答
- ウ 迅速な事業展開のために, 他社の事業を買収した。
- エ 利益が得られにくい事業から撤退した。
解説
この問題は、コンプライアンス(法令遵守)に関する企業の取り組みについて問うものです。コンプライアンスの基本的な意味を理解していれば、適切な選択肢を判断できます。
【解き方】 問題は、コンプライアンス強化活動として最も適切なものを選ぶよう求めています。コンプライアンスとは「法令遵守」を核とし、倫理規範や社会規範など、企業活動におけるあらゆるルールを守ることを指します。 選択肢の中で、この定義に直接合致するのは「イ 遵守すべき法律やルールについて従業員に教育を行った」です。従業員への教育は、企業全体のコンプライアンス意識を高め、実際の行動に結びつけるための、直接的かつ効果的な取り組みだからです。
コンプライアンスとは何か
コンプライアンス(compliance)という言葉は、直訳すると「要求や命令に従うこと」「応じること」を意味します。ビジネスの世界、特に企業経営においては「法令遵守」と訳されることが多いですが、単に法律を守ることだけを指すのではありません。
企業が守るべきルールには、以下のようなものが含まれます。
- 法令: 会社法、労働基準法、独占禁止法、個人情報保護法、景品表示法など、国内外の様々な法律。
- 社会規範・倫理: 公正な取引、環境保護、人権尊重、差別の禁止など、社会が企業に期待する道徳的・倫理的な基準。
- 企業倫理・社内規程: 就業規則、情報管理規程、ハラスメント防止規程、企業行動規範など、企業が独自に定めるルール。
これら広範なルールや社会からの期待に応え、適切に企業活動を行うことがコンプライアンスの本質です。
なぜコンプライアンスが重要なのか
現代の企業にとって、コンプライアンスは単なる義務ではなく、企業の持続的な成長と社会からの信頼を得るための基盤となります。
企業リスクの回避
コンプライアンス違反は、企業に甚大な損害をもたらす可能性があります。具体的には、
- 法的罰則: 課徴金、罰金、業務停止命令など。
- 社会的信用の失墜: ブランドイメージの低下、消費者離れ、株価下落など。
- 損害賠償: 違反によって被害を受けた個人や組織からの訴訟。
- 人材流出: 従業員の士気低下、優秀な人材の離職。
これらを未然に防ぐ上で、コンプライアンスの徹底は不可欠です。
企業価値の向上
コンプライアンスを重視し、透明性の高い経営を行う企業は、社会からの信頼を得やすくなります。これは、顧客、取引先、投資家、従業員といった様々なステークホルダー(利害関係者)との良好な関係構築につながり、結果として企業価値の向上に寄与します。
コンプライアンス強化の具体的な活動例
正解である「イ 遵守すべき法律やルールについて従業員に教育を行った」は、コンプライアンス強化活動の非常に代表的かつ直接的な例です。その他の具体的な活動には以下のようなものがあります。
- 社内規程の整備: 企業倫理綱領や行動規範、情報セキュリティポリシー、個人情報保護規程などを策定し、周知徹底する。
- 内部通報制度の設置: 従業員が社内の不正行為や法令違反を発見した際に、匿名で報告できる窓口を設ける。
- リスクマネジメント体制の構築: コンプライアンス違反につながるリスクを特定し、その予防策や発生時の対応策をあらかじめ検討しておく。
- 定期的な監査と評価: コンプライアンス体制が適切に機能しているかを定期的に確認し、必要に応じて改善を行う。
- 経営層のリーダーシップ: 経営陣が率先してコンプライアンスを重視する姿勢を示し、組織全体に浸透させる。
他の選択肢が適切でない理由
ア 従業員の社会貢献活動を支援するプログラムを拡充した。 これは「企業の社会的責任 (CSR: Corporate Social Responsibility)」の一環であり、企業のイメージ向上や地域貢献につながる活動ですが、直接的なコンプライアンス(法令遵守など)の強化活動ではありません。CSRはコンプライアンスを含むより広い概念ですが、この選択肢はコンプライアンス「強化」とは言えません。
ウ 迅速な事業展開のために, 他社の事業を買収した。 これは「M&A (Mergers and Acquisitions)」と呼ばれる経営戦略であり、事業規模の拡大や新規事業への参入を目的としたものです。コンプライアンス強化とは直接関係ありません。
エ 利益が得られにくい事業から撤退した。 これは「事業戦略の見直し」や「経営効率化」の一環であり、企業の収益性向上を目的とした経営判断です。コンプライアンス強化とは直接関係ありません。
ITパスポート試験におけるコンプライアンスの意義
ITパスポート試験は、ITを活用するすべての社会人に求められる基礎知識を問うものです。IT技術は社会に大きな影響を与えるため、コンプライアンスの知識はIT分野においても特に重要です。例えば、
- 個人情報保護法: 顧客データや従業員データの取り扱いにおいて、厳格な遵守が求められます。
- 情報セキュリティ: サイバー攻撃への対策はもちろん、機密情報の適切な管理やアクセス制限は、企業のコンプライアンスの一部です。
- 著作権・知的財産権: ソフトウェアの利用ライセンス遵守や、他者の知的財産権を侵害しない製品・サービスの開発は、IT企業にとって不可欠です。
- 下請法: システム開発委託など、IT業界特有の取引における公正な契約関係の維持も重要です。
このように、ITパスポート試験でコンプライアンスが問われるのは、IT技術者が技術だけでなく、社会的な責任や倫理観を持って業務に当たる必要があるという教育的意図があるためです。