平成28年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問36 解説 ソフトウェア導入
社内で開発したソフトウェアの本番環境への導入に関する記述のうち,最も適切なものはどれか。
- ア 開発したソフトウェアの規模によらず必ず導入後のシステム監査を行い,監査報告書を作成する必要がある。
- イ ソフトウェア導入に当たっては,実施者,責任者などの実施体制を明確にしておく必要がある。 ✓ 正答
- ウ ソフトウェア導入は開発作業に比べて短期間に実施できるので,導入手順書を作成する必要はない。
- エ ソフトウェア導入はシステム部門だけで実施する作業なので,作業結果を文書化して利用部門に伝える必要はない。
解説
この問題は、ソフトウェアを実際の業務で利用する本番環境へ導入する際の、適切な管理体制や考慮すべき点について問うものです。解き方のポイントは、システム導入という重要な作業において「当たり前のこと」または「リスク管理上不可欠なこと」はどれか、という視点で選択肢を評価することです。
「ア」「ウ」「エ」の選択肢には、「必ず〜」「〜必要はない」「〜だけで実施する」といった極端な表現や、一般的に不適切とされる内容が含まれています。これらを除外することで、「イ」が最も適切な記述であることが導き出せます。
ソフトウェア導入の重要性と管理の視点
ソフトウェアの本番環境への導入は、開発したシステムが実際に稼働し、企業の業務やサービスに影響を与える非常に重要な局面です。この段階で問題が発生すると、業務停止、データ破損、顧客への影響など、甚大な損害につながる可能性があります。そのため、導入作業は細心の注意を払って計画され、管理される必要があります。
ITパスポート試験では、このようなシステム開発・運用の各フェーズにおいて、技術的な側面だけでなく、管理やプロジェクトマネジメント、リスク管理、コミュニケーションといったビジネス的な側面も理解しているかが問われます。今回の問題も、まさにその管理の視点から適切な行動を判断する能力を測るものです。
選択肢イが最も適切な理由
イ ソフトウェア導入に当たっては,実施者,責任者などの実施体制を明確にしておく必要がある。
これは、システム導入という重要な作業を安全かつ確実に行うための、最も基本的な前提条件です。
- 実施者の明確化: 誰が具体的にどのような作業を行うのかを明確にすることで、作業の重複を防ぎ、抜け漏れをなくし、効率的に作業を進めることができます。
- 責任者の明確化: 作業全体や各工程において、最終的な判断を下し、問題発生時に責任を負う人物を定めることは、トラブル発生時の迅速な対応や、意思決定の遅延を防ぐ上で不可欠です。
実施体制が不明確なまま作業を進めると、「誰がやるのか」「誰に聞けばいいのか」「問題があったときに誰が責任を取るのか」が曖昧になり、混乱や遅延、最悪の場合はシステムの停止やデータ破損といった重大な事故につながるリスクが高まります。そのため、プロジェクトマネジメントの観点からも、実施体制の明確化は必須と言えます。
他の選択肢が不適切な理由
- ア 開発したソフトウェアの規模によらず必ず導入後のシステム監査を行い,監査報告書を作成する必要がある。 システム監査は、システムの信頼性、安全性、効率性を客観的に評価する重要なプロセスですが、「規模によらず必ず」実施するというのは不適切です。小規模なシステムやリスクの低い変更の場合には、監査の範囲や深度を調整したり、あるいは内部的な確認で済ませることもあります。監査の実施は、システムの重要度、リスク、費用対効果などを考慮して判断されるべきです。
- ウ ソフトウェア導入は開発作業に比べて短期間に実施できるので,導入手順書を作成する必要はない。 導入作業が短期間であっても、その複雑性やリスクの高さは変わりません。むしろ短期間で集中して行われるからこそ、正確性と効率性を確保するために詳細な手順書が不可欠です。手順書は、作業の標準化、品質確保、トラブル発生時の対応指針、将来的なノウハウ継承に大いに役立ちます。手順書なしでの導入は、ヒューマンエラーのリスクを大幅に高めます。
- エ ソフトウェア導入はシステム部門だけで実施する作業なので,作業結果を文書化して利用部門に伝える必要はない。 ソフトウェアは利用部門が業務で使うために導入されます。そのため、システム部門だけでなく、利用部門との連携は不可欠です。導入によって利用部門の業務フローや操作方法が変わることもあり、事前の周知や、導入後の運用方法、障害発生時の連絡体制などを文書化し、利用部門に伝える必要があります。システム部門だけで完結させ、利用部門に情報を伝えないことは、混乱や不満を生み、システムの円滑な運用を妨げる原因となります。
まとめ
システム導入は、単なる技術的な作業ではなく、組織全体の業務に影響を与えるビジネスプロセスの一環です。そのため、適切な管理体制を確立し、リスクを管理し、関係者間で密接なコミュニケーションを取ることが極めて重要です。この問題は、ITエンジニアとしてだけでなく、ビジネスパーソンとして必要な常識的な判断力を問うています。