平成28年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問38 解説 リスク対応計画
システム開発プロジェクトにおいて,開発用のPCの導入が遅延することになった。 しかし,遅延した場合には旧型のPCを代替機として使用するようにあらかじめ計画していたので,開発作業を予定どおりに開始することができた。この場合に,プロジェクトマネジメントとして実施したものはどれか。
- ア クリティカルパスの見積り
- イ スコープ定義
- ウ ステークホルダの特定
- エ リスク対応計画の実行 ✓ 正答
解説
システム開発プロジェクトにおいて、開発用PCの導入遅延という問題が発生しましたが、あらかじめ旧型のPCを代替機として使用する計画が立てられており、その計画を実行することで、プロジェクトを予定どおりに開始できたという事例です。このように、予期せぬ問題(リスク)が発生した際に、事前に準備しておいた対応策を実施することは、「リスク対応計画の実行」にあたります。
リスクマネジメントとは
プロジェクトマネジメントにおいて、プロジェクトの目標達成を阻害する可能性のある不確実な事象を「リスク」と呼びます。リスクは、プロジェクトにとって悪い影響(脅威)をもたらすものだけでなく、良い影響(機会)をもたらす可能性のあるものも含まれますが、ITパスポート試験では主に脅威に関する問題が出題されます。
「リスクマネジメント」とは、プロジェクトの成功確率を高めるために、これらのリスクを体系的に管理するプロセス全体を指します。具体的には、以下の段階で構成されます。
- リスク特定:プロジェクトに影響を与える可能性のあるリスクを洗い出す。
- リスク分析:特定したリスクの発生確率や影響度を評価する。
- リスク対応計画:リスクの発生に備え、どのような対策を講じるかを計画する。
- リスク対応計画の実行:実際にリスクが顕在化した際に、計画しておいた対策を実行する。
- リスク監視:リスクの状況を継続的に監視し、必要に応じて対応計画を見直す。
本問題は、上記プロセスの「リスク対応計画の実行」に該当します。
リスク対応計画と実行の重要性
問題文のように、「開発用PCの導入遅延」はシステム開発プロジェクトにおけるよくあるリスクの一つです。このようなリスクが顕在化した場合に備え、事前に対応策を考えておくことが「リスク対応計画」です。リスク対応計画には、主に以下のような戦略があります。
- 回避:リスクの発生自体を防ぐように計画を変更する。
- 転嫁:リスクを第三者に移転する(保険の加入、外部委託など)。
- 軽減:リスクの発生確率や影響度を下げる(予備品を用意する、テストを強化するなど)。
- 受容:リスクを受け入れ、特段の対応策は取らない。ただし、状況によっては緊急対応計画(コンティンジェンシープラン)を準備しておく。
今回のケースでは、PC導入の遅延というリスクに対し、「旧型PCを代替機として使用する」という対策を事前に計画していました。これは、リスクによる影響を最小限に抑える「軽減」戦略、特に「コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)」にあたります。そして、実際にリスクが発生した際にこの計画を実行したことで、プロジェクトの遅延という大きな影響を回避できました。
この事例が示すように、プロジェクトでは予期せぬ事態がつきものです。あらかじめリスクを想定し、その発生に備えて具体的な対策を計画し、問題発生時にそれを実行できる体制を整えておくことは、プロジェクトを成功に導くために極めて重要な能力です。ITパスポート試験において、このようなプロジェクトマネジメントの知識が問われるのは、将来IT分野で働く際に、技術力だけでなく、プロジェクトを計画し、管理する能力も不可欠であることを示唆しています。
他の選択肢について
- ア クリティカルパスの見積り:プロジェクトの全タスクの中で、最も時間のかかる一連のタスク経路を特定し、プロジェクトの最短完了期間を決定する手法です。問題は、遅延への対応策の実行であり、クリティカルパスの特定とは直接関係ありません。
- イ スコープ定義:プロジェクトで何を成果物として作成し、何を実施するか、その範囲を明確に定義するプロセスです。開発PCの遅延への対応策とは異なる概念です。
- ウ ステークホルダの特定:プロジェクトに影響を与える、またはプロジェクトから影響を受ける可能性のある個人、グループ、組織(顧客、チームメンバー、経営層など)を識別するプロセスです。問題の状況は、特定されたリスクへの対処であり、ステークホルダの特定とは直接関係ありません。