平成28年度 秋期 ITパスポート試験 公開問題 問45 解説 共通フレーム
共通フレーム(Software Life Cycle Process)で定義されている内容として,最 も適切なものはどれか。
- ア ソフトウェア開発とその取引の適正化に向けて,基本となる作業項目を定義し 標準化したもの ✓ 正答
- イ ソフトウェア開発の規模,工数,コストに関する見積手法
- ウ ソフトウェア開発のプロジェクト管理において必要な知識体系
- エ 法律に基づいて制定された情報処理用語やソフトウェア製品の品質や評価項目
解説
この問題は、ソフトウェア開発における重要な標準の一つである「共通フレーム」について、その定義を正しく理解しているかを問うものです。 選択肢アが示すように、共通フレームはソフトウェア開発とその取引を適正化するために、基本となる作業項目を定義し、標準化したものと理解することで正解を導き出せます。
共通フレームとは何か
共通フレーム(正式名称: Software Life Cycle Process - 共通フレーム)は、ソフトウェアの開発、保守、運用といったライフサイクル全体を通じて必要となる作業項目(プロセス)を定義し、標準化したものです。これは、国際標準であるISO/IEC 12207を基に、日本の実情に合わせてJIS X 0160として策定されました。
この標準の主な目的は、ソフトウェア開発プロジェクトに関わるすべての関係者(発注者、受注者、開発者など)が、共通の認識と共通の言葉(用語)でコミュニケーションできるようにすることです。これにより、以下のような効果が期待されます。
- 開発プロセスの明確化: どのような作業が、どのような順序で、誰によって行われるべきかが明確になります。
- 取引の透明性・適正化: 発注者と受注者の間で「要件定義」や「テスト」といった言葉が具体的に何を指すのかが明確になり、認識のずれによるトラブルや手戻りを減らします。見積もりや契約の内容もより具体的に議論できるようになります。
- 品質の向上と効率化: 標準化されたプロセスに従うことで、開発品質のばらつきを抑え、開発作業の効率化にもつながります。
なぜ共通フレームが必要なのか?
現代のソフトウェア開発は、非常に複雑で多岐にわたります。プロジェクトの規模が大きくなればなるほど、多くの企業や人が関わることになり、それぞれの立場で「ソフトウェア開発」に対するイメージや期待が異なることがあります。例えば、「要件定義」という言葉一つとっても、発注側は「システムに何をしてほしいか決めること」と考えている一方で、受注側は「それを実現するための機能や制約を具体的に文書化すること」と捉えるかもしれません。この認識のずれが、プロジェクトの遅延、コスト超過、さらにはプロジェクト失敗の原因となることも少なくありません。
共通フレームは、このような認識のずれをなくすための「共通言語」や「地図」のような役割を果たします。どのような工程があり、各工程で何を行うべきか、その成果物は何かといったことを明確に定義することで、プロジェクト関係者全員が同じグランドルールの上で議論し、作業を進めることができるようになります。
ITパスポート試験では、皆さんが将来、ITを活用するビジネスパーソンとして、ソフトウェア開発プロジェクトがどのような仕組みで進められているのか、その基本を理解していることが求められます。共通フレームは、開発プロジェクトを円滑に進めるための土台となる重要な概念であり、その目的と役割を把握しておくことは、プロジェクト管理やベンダーとの折衝など、様々なビジネスシーンで役立つ知識となります。
他の選択肢との比較
共通フレームの理解を深めるために、他の選択肢が指す内容も確認しておきましょう。
イ ソフトウェア開発の規模,工数,コストに関する見積手法 これは、ファンクションポイント法やCOCOMOなどの具体的な見積もり手法を指します。共通フレームは「何をやるか」の標準化であり、これらの見積もり手法は「どうやって見積もるか」という手法であり、直接は異なります。ただし、共通フレームで定義されるプロセスの中で、見積もりを行う作業は含まれます。
ウ ソフトウェア開発のプロジェクト管理において必要な知識体系 これは「PMBOK」(Project Management Body of Knowledge)などに代表される、プロジェクト管理全般に関する知識体系を指します。PMBOKはプロジェクトを「どう管理するか」という側面が強いのに対し、共通フレームはプロジェクトの「活動内容(プロセス)」を定義するものです。両者は補完し合う関係にありますが、定義する対象が異なります。
エ 法律に基づいて制定された情報処理用語やソフトウェア製品の品質や評価項目 これは、情報処理用語を定義するJIS規格や、ソフトウェア品質を評価するためのISO/IEC 25000シリーズ(SQuaRE)といった規格を指します。これらも標準化の活動ですが、共通フレームが対象とする開発プロセス全体とは別の側面を標準化しています。
このように、共通フレームは「ソフトウェア開発プロジェクトにおける作業項目(プロセス)の標準化」という明確な役割を持っています。