平成28年度 春期 ITパスポート試験 問40 解説 プロジェクト報告ルール
システム開発プロジェクトのテスト工程において, 各担当者が報告書をチームリーダに提出し, チームリーダがそれらの内容をまとめてプロジェクトマネージャに報告している。次の報告ルールを定めるとき, チームリーダの報告として適切なものはどれか。 〔報告ルール〕 ・各担当者は, 担当する機能のテストの進捗率を報告書に記載する。 ・各担当者は, 遅れがあるときに, その原因と対策内容を報告書に記載する。 ・チームリーダは, 各担当者の進捗率の適切さを確認した後, それらを集約して全体の進捗率を求め, 計画との差異, 今後の見通しを報告書に記載する。 ・チームリーダは, 遅れがあるときに, 担当者にヒアリングを行い, 原因と対策内容の妥当性を確認する。また, 他チームへの影響を分析し, 対応策と期限を報告書に記載する。
- 進捗に遅れのある担当者の報告だけを報告する。
- 担当者の報告を一覧化したものだけを報告する。
- 担当者の報告を集約し, 進捗に遅れがあるときはチームリーダの見解を加える。 ✓ 正答
- チームリーダの期待する進捗に合わせて担当者の進捗率を補正する。
解説
この問題は、チームリーダーに求められる役割が「情報の単なる中継」ではなく「情報の整理と分析・付加価値の提供」であるという点を見抜くことで正解できます。
報告業務におけるリーダーの役割
報告ルールを読み解くと、チームリーダーが行うべきことは以下の3点に集約されます。
- 報告内容の妥当性確認(担当者の進捗率が正しいかチェックする)
- 全体像の把握(各担当者の状況をまとめて、プロジェクト全体の進捗率を出す)
- 問題への対処と影響分析(遅延がある場合に、原因・対策が妥当か判断し、チーム外への影響まで考えて報告する)
これらのルールに基づけば、単に担当者の報告を転記するだけでは不十分です。リーダーは、プロジェクトマネージャに対して「全体で何が起きているのか」「問題に対してどのような手を打っているのか」を明確に伝える必要があるため、自分の見解や分析結果を添えることが不可欠となります。
なぜ他の選択肢は不適切なのか
選択肢を検討する際は、リーダーに求められる責務に注目してください。
進捗に遅れのある担当者の報告だけを報告する これは、進捗が順調な部分が無視されているため、全体像を把握したいプロジェクトマネージャにとっては情報不足です。
担当者の報告を一覧化したものだけを報告する これは、情報をまとめただけで、リーダーとしての「分析」や「判断」が含まれていません。プロジェクトマネージャが自分で判断しなければならず、リーダーの介在価値がありません。
チームリーダの期待する進捗に合わせて担当者の進捗率を補正する これはデータの改ざんに当たります。進捗率は客観的な事実に従うべきであり、リーダーの期待値で数値を調整することは、隠蔽や誤解を生むため適切ではありません。
プロジェクト管理における情報の価値
この問題は、単なる事務処理としての「報告」と、管理職として行う「進捗管理」の違いを問うています。
ITプロジェクトでは、数百人規模の開発を行うことも珍しくありません。プロジェクトマネージャが個々の担当者からの細かい報告をすべて直接受け取ると、情報が多すぎて判断が遅れてしまいます。そのため、チームリーダーが現場の情報を集約し、重要なポイントを抽出して「マネージャが判断しやすい形」に変換することが求められます。
このような「現場と経営層の間で情報を翻訳・加工する能力」は、ITパスポートのマネジメント分野だけでなく、実務におけるリーダーシップの基礎となります。問題解決能力や報告の質の高さは、どの職種でも評価される重要なスキルです。