平成28年度 春期 ITパスポート試験 問47 解説 プロジェクトスコープ管理
プロジェクトスコープマネジメントに関する記述として,適切なものはどれか。
- ア プロジェクトが生み出す製品やサービスなどの成果物と,それらを完成するために必要な作業を定義し管理する。 ✓ 正答
- イ プロジェクト全体を通じて,最も長い所要期間を要する作業経路を管理する。
- ウ プロジェクトの結果に利害を及ぼす可能性がある事象を管理する。
- エ プロジェクトの実施とその結果によって利害を被る関係者を調整する。
解説
この問題は「スコープ」という言葉が何を指しているかを理解していれば、迷わず正解を選べます。英語のscopeには「範囲」という意味があり、プロジェクトマネジメントにおいては「このプロジェクトで何をどこまでやるのか」という範囲を明確にすることを指します。したがって、作業範囲や成果物を定義することがスコープマネジメントの核心となります。
プロジェクトスコープマネジメントとは
プロジェクトマネジメント知識体系(PMBOK)において、プロジェクトスコープマネジメントはプロジェクトを成功させるために不可欠なプロセスのひとつです。
プロジェクトの開始当初は、目的やゴールが曖昧なことがあります。そのまま作業を始めると、本来不要な機能を追加してしまったり、逆に必要な作業が漏れていたりして、予算や納期を守れなくなります。スコープマネジメントは、プロジェクトで作成する成果物(納品物)と、それを作るために必要な作業(タスク)の境界線を明確に引くことで、無駄な作業を排除し、プロジェクトを正しい方向へ導くための管理手法です。
選択肢の分析
この問題の選択肢は、それぞれ異なるプロジェクトマネジメントの領域を指しています。
・ア(正解):これがスコープマネジメントの説明です。「何を」「どこまで」作るのかを定義します。 ・イ:これは「スケジュールマネジメント」の説明です。最も長い経路はクリティカルパスと呼ばれ、プロジェクトの最短完了期間を決定する重要な指標です。 ・ウ:これは「リスクマネジメント」の説明です。将来起こりうる不確実な事象を予測し、備えるプロセスです。 ・エ:これは「ステークホルダーマネジメント」の説明です。利害関係者(顧客、ユーザー、協力会社など)の期待を把握し、プロジェクトに良い影響を与えられるよう調整します。
実務における重要性
実際の現場でスコープマネジメントが最も重要なのは、プロジェクトの「要求定義」と「要件定義」のフェーズです。
例えば、Webサイト制作の案件で「おしゃれなサイトにしたい」という曖昧な要望だけを聞いて作業を始めると、後から「このボタンも付けたい」「アニメーションも入れてほしい」といった追加要望が次々と出てきます。これがいわゆる「スコープクリープ(スコープの肥大化)」と呼ばれる現象です。
スコープマネジメントが適切に行われていれば、「今回のプロジェクト範囲はトップページと詳細ページの計5ページまでとし、お問い合わせフォームの設置は含めない」といった取り決めが文書化されています。これにより、後から追加要望が出た際にも、それが当初の範囲外であることを冷静に指摘でき、追加費用やスケジュールの見直しを正当に交渉できるようになります。
知識として覚えるだけでなく、プロジェクトという限られたリソースの中で「やるべきこと」と「やらないこと」を区別し、合意形成を行うためのツールであると理解しておきましょう。