平成28年度 春期 ITパスポート試験 問49 解説 プロトタイプの定義
ユーザの要求を定義する場合に作成するプロトタイプはどれか。
- ア 基幹システムで生成されたデータをユーザ自身が抽出・加工するためのソフトウェア
- イ ユーザがシステムに要求する業務の流れを記述した図
- ウ ユーザとシステムのやり取りを記述した図
- エ ユーザの要求を理解するために作成する簡易なソフトウェア ✓ 正答
解説
プロトタイプとは「試作品」のことであり、開発の初期段階でユーザと開発者の間の認識のズレをなくすために作成する簡易的なモデルを指します。選択肢エがこれに該当します。
プロトタイプの目的と役割
システム開発において、言葉だけで要求をすり合わせるのは非常に困難です。ユーザはシステムを実際に操作して初めて「ここが使いにくい」「この機能が足りない」といった具体的な要望に気づくことが多いためです。
プロトタイプは、完成品をいきなり作るのではなく、画面のデザインや一部の主要な機能だけを動くように作成します。これを見ながらユーザからフィードバックを得ることで、手戻りを防ぎ、要求定義の精度を高めることが可能になります。
なぜ他の選択肢は誤りなのか
選択肢アは、エンドユーザコンピューティングやBIツールに関連する記述です。プロトタイプはあくまで開発プロセスの一環であり、それ自体が分析ツールを指すわけではありません。
選択肢イおよびウは、どちらも図を用いた分析手法を指しています。イは業務フロー図などのプロセス設計、ウはユースケース図などが該当します。これらは要求を「記述」する手法ですが、プロトタイプのような「実際に動かして確認できる試作品」とは性質が異なります。
開発現場におけるプロトタイプの実践
実際のシステム開発、特にアジャイル開発のような手法では、プロトタイプを小刻みに作成して確認を繰り返します。
例えば、Webアプリを作る際に、いきなりデータベース設計から始めるのではなく、紙に描いた画面構成図(ワイヤーフレーム)や、ブラウザ上でボタンが押せる程度の簡易画面を先に見せます。これにより、ユーザが抱いている「こんな使い心地になるはずだ」というイメージと、開発側の「このように実装する」という認識が一致しているかを早期に検証します。
この問題の教育的意図は、要求定義における「コミュニケーションの重要性」を理解させることにあります。システムの失敗の多くは、開発開始後の「思っていたものと違う」という食い違いに起因するため、いかに効率よく認識を合わせるかという視点はITパスポート試験でも重要な項目です。