平成28年度 春期 ITパスポート試験 問58 解説 ソーシャルエンジニアリング
情報セキュリティにおけるソーシャルエンジニアリングへの対策の例として, 適切なものはどれか。
- ア ウイルスを検知, 除去する機能を電子メールシステムに導入する。
- イ サーバへの攻撃を想定した擬似アタック試験を実施し, 発見された脆弱性への対策を行う。
- ウ 従業員のセキュリティ意識を高めるため, セキュリティ教育を行う。 ✓ 正答
- エ 停電に備えて, サーバルーム向けの自家発電装置を導入する。
解説
ソーシャルエンジニアリング対策の考え方
この問題のポイントは、ソーシャルエンジニアリングが「技術的な弱点」を突く攻撃ではなく、「人間の心理的な隙や行動」を突く攻撃であるという点です。したがって、対策もシステムの設定変更ではなく、人間の行動を変えるための教育が正解となります。
ソーシャルエンジニアリングとは
ソーシャルエンジニアリングとは、コンピュータを直接ハッキングするのではなく、ゴミ箱から機密書類を探し出したり、電話でパスワードを聞き出したり、肩越しに画面を覗き見たり(ショルダーハッキング)することで情報を盗み出す手法です。
攻撃者は、システム管理者を装って「至急パスワードを教えてほしい」と電話をかけてきたり、親切な社員を装ってオフィスに侵入したりします。このように、攻撃の入り口が「人間の心理」にあるため、最新のセキュリティソフトを入れても防ぐことができません。
なぜ他の選択肢が不適切なのか
各選択肢は、それぞれ別のセキュリティ脅威に対する対策です。試験では、これらの対応関係を整理しておくことが重要です。
アの「ウイルスを検知、除去する機能」は、マルウェアやウイルスに対する技術的対策です。 イの「サーバへの攻撃を想定した擬似アタック試験(ペネトレーションテスト)」は、システムやネットワークの脆弱性を調査する技術的対策です。 エの「自家発電装置の導入」は、物理的なインフラの維持や、可用性(システムが止まらないこと)を確保するための対策です。
このように、ソーシャルエンジニアリングは「人間の行動規範」に働きかける必要があるため、従業員に対する定期的な研修や教育が最も効果的で、かつ直接的な防御策となります。
実務における活用の視点
実務において、この知識は「セキュリティは技術だけでは完成しない」という認識を持つために不可欠です。どれほど強固なパスワードポリシーを設定していても、窓口の担当者が電話口で「上司から言われているので」と言われてパスワードを教えてしまえば、すべてが水の泡になります。
この問題の教育的意図は、受験者に対して「技術者であっても、情報の守り手として人間心理の脆弱性を理解せよ」というメッセージを伝えています。離席時の画面ロック、不用意な書類の放置禁止、不審なメールや電話への対応フローなど、日常的な行動の積み重ねこそが、最も強力なセキュリティ対策となります。