平成28年度 春期 ITパスポート試験 問86 解説 ソーシャルエンジニアリング
情報セキュリティにおけるソーシャルエンジニアリングの例として,適切なものはどれか。
- ア 社員を装った電話を社外からかけて,社内の機密情報を聞き出す。 ✓ 正答
- イ 送信元IPアドレスを偽装したパケットを送り,アクセス制限をすり抜ける。
- ウ ネットワーク上のパケットを盗聴し,パスワードなどを不正に入手する。
- エ 利用者が実行すると,不正な動作をするソフトウェアをダウンロードする。
解説
この問題の正解を見極めるコツは、攻撃の対象がシステム(コンピュータの仕組み)か、人間(心理的な隙)かを見分けることです。選択肢の中で、コンピュータの脆弱性を突くのではなく、人の心理や行動を悪用しているものがソーシャルエンジニアリングの例となります。
ソーシャルエンジニアリングとは何か
ソーシャルエンジニアリングとは、コンピュータのシステム的な弱点を突くのではなく、人間の油断やミス、あるいは善意を利用して、機密情報(パスワードや顧客リストなど)を不正に入手する手法の総称です。
この手法の厄介な点は、最新のウイルス対策ソフトや高度なファイアウォールを導入していても、それを操作する人間が騙されてしまえば、防ぐことが非常に困難であるという点です。今回の問題にある「社員を装った電話」は、相手を信じ込ませる心理的な駆け引きを用いるため、典型的なソーシャルエンジニアリングとなります。
他の選択肢が誤りである理由
選択肢イ、ウ、エに挙げられている手法は、いずれもシステム上の脆弱性を突く技術的な攻撃手法です。
- イ:IPスプーフィング(IPアドレス偽装)と呼ばれ、信頼された端末になりすましてネットワークのアクセス制限を回避する技術的攻撃です。
- ウ:スニフィング(盗聴)です。ネットワーク上のデータを傍受する行為であり、通信プロトコルの特性や仕組みを悪用したものです。
- エ:マルウェア(不正なソフトウェア)の配布です。プログラムの実行やダウンロードの仕組みを悪用しており、これらは主に「技術的セキュリティ対策」によって防ぐ対象となります。
実務における重要性
この問題が試験で問われる理由は、セキュリティ対策がいくら進歩しても、情報の漏洩経路として「人」が最も大きなリスク要因になり得ることを認識させるためです。
例えば、物理的なオフィス内での事例として、以下のような行為もソーシャルエンジニアリングに含まれます。
・ショルダーハッキング:肩越しに画面を覗き見してパスワードを盗む ・トラッシング:ゴミ箱に捨てられた書類から機密情報を探り出す ・なりすまし:清掃員や宅配業者を装ってオフィスに侵入する
企業で働く際、私たちは「怪しい電話には回答しない」「離席時には必ず画面ロックをかける」「不要な書類はシュレッダーにかける」といったルールを徹底する必要があります。これらは高価なシステムを導入しなくても実行できる、極めて重要なセキュリティ対策といえます。