平成29年度 春期 ITパスポート試験 公開問題 問54 解説 ユースケースの特徴
システムの開発プロセスで用いられる技法であるユースケースの特徴を説明したものとして,最も適切なものはどれか。
- ア システムで使われるデータを定義することから開始し,それに基づいてシステムの機能を設計する。
- イ データとそのデータに対する操作を一つのまとまりとして管理し,そのまとまりを組み合わせてソフトウェアを開発する。
- ウ モデリング言語の一つで,オブジェクトの構造や振る舞いを記述する複数種類の表記法を使い分けて記述する。
- エ ユーザがシステムを使うときのシナリオに基づいて,ユーザとシステムのやり取りを記述する。 ✓ 正答
解説
この問題は「ユースケース」という言葉の定義を正しく理解しているかどうかが鍵です。ユースケースとは、システムが提供する機能を「利用者の視点(シナリオ)」で明らかにする技法を指します。したがって、選択肢エが正解となります。
ユースケースの要点は、システムの中身(プログラムがどう動くか)ではなく、システムの外側にいる利用者(アクター)が、システムを使ってどのような目的を達成したいのか、その一連の流れを記述することにあります。
各選択肢を詳しく見ていくと、ITパスポートで頻出する開発手法の違いが明確になります。
選択肢アは「データ中心設計」の説明です。業務で扱うデータを中心に整理し、それらを処理するための機能を考える手法です。データベース設計を重視する場合によく用いられます。
選択肢イは「オブジェクト指向」の説明です。データと、そのデータに対する操作をセットにしたものをオブジェクトと呼びます。このオブジェクトを部品として組み合わせることで、再利用性や拡張性の高いシステムを作る手法です。
選択肢ウは「UML(統一モデリング言語)」の説明です。UMLはシステム開発における設計図を統一ルールで描くための言語であり、その中にはクラス図やシーケンス図など、さまざまな種類の図が含まれます。実は、ユースケース図もこのUMLに含まれる一つの表記法ですが、選択肢ウはUML全体を指す説明であるため、ユースケースそのものの特徴としてはエの方がより適切です。
システム開発の現場において、ユースケースを活用する場面は「要件定義」の段階です。開発者だけで仕様を決めてしまうと、現場のユーザーにとって使いにくいシステムが出来上がってしまうリスクがあります。そこで、ユースケースを使って「ユーザーがどのような手順でシステムを操作し、システムがどう応えるか」を具体的かつ対話的に整理することで、開発側とユーザー側の認識のズレを防ぐことができます。
この問題の教育的意図は、単に用語を暗記することではなく、システム開発の上流工程において「利用者の視点」を取り入れる重要性を理解させることにあります。複雑なシステムであっても、最終的に使うのは人である以上、どのような目的で、どのような操作が行われるかを明確にするプロセスが不可欠だからです。