令和元年度 秋期 ITパスポート試験 問17 解説 イノベーションのジレンマ
イノベーションのジレンマに関する記述として,最も適切なものはどれか。
- ア 最初に商品を消費したときに感じた価値や満足度が,消費する量が増えるに従い,徐々に低下していく現象
- イ 自社の既存商品がシェアを占めている市場に,自社の新商品を導入することで,既存商品のシェアを奪ってしまう現象
- ウ 全売上の大部分を,少数の顧客が占めている状態
- エ 優良な大企業が,革新的な技術の追求よりも,既存技術の向上でシェアを確保することに注力してしまい,結果的に市場でのシェアの確保に失敗する現象 ✓ 正答
解説
「イノベーションのジレンマ」というキーワードを見たら、優良企業が既存事業を大切にするあまり、新しい波(破壊的イノベーション)に乗り遅れて没落するストーリーを思い浮かべてください。選択肢の中で、既存の成功体験が足かせになって失敗するという文脈を探すのが正解への最短ルートです。
この用語はクレイトン・クリステンセン教授が提唱した概念で、経営戦略や技術戦略の分野で非常に重要です。優良企業ほど、現在利益をもたらしている既存顧客の声や、既存の技術的な枠組みを重視します。そのため、最初は性能が低く、利益率も低い新しい技術(破壊的イノベーション)を「顧客が求めていない」と判断し、投資対象から外してしまいます。しかし、その技術が急速に進化し、気づいたときには市場環境が激変してしまい、従来の強者だったはずの優良企業が敗北してしまうという皮肉な現象を指します。
試験ではこの用語の定義を問う問題以外に、具体的な事例を挙げて「これはどの用語に該当するか」を問うパターンも想定されます。例えば、デジタルカメラの台頭によってフィルムメーカーが苦境に立たされた事例や、スマートフォンによって携帯電話メーカーがシェアを失った事例などが挙げられます。いずれも「既存の技術で十分に利益が出ていたため、新しいパラダイムへの移行が遅れた」という点が共通しています。
選択肢にある他の用語についても整理しておくと安心です。 アは「限界効用逓減の法則」に関する記述です。消費量が増えるほど追加の満足度が減るという経済学の基本原理です。 イは「カニバリゼーション(共食い)」のことです。自社の新商品で自社の既存商品の売り上げを下げてしまう現象ですが、必ずしも企業が失敗するわけではなく、戦略的に行う場合もあります。 ウは「パレートの法則(80:20の法則)」に関連する状態です。「売上の8割は2割の顧客がもたらす」といった経験則を指します。
イノベーションのジレンマ(Wikipedia) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9E 【図解】イノベーションのジレンマとは何か(GLOBIS 知見録) https://globis.jp/article/4862