令和6年度 ITパスポート試験 公開問題 問32 解説 労働者派遣の雇用関係
労働者派遣における派遣労働者の雇用関係に関する記述のうち,適切なものはどれか。
- 派遣先との間に雇用関係があり,派遣元との間には存在しない。
- 派遣元との間に雇用関係があり,派遣先との間には存在しない。 ✓ 正答
- 派遣元と派遣先のいずれの間にも雇用関係が存在する。
- 派遣元と派遣先のいずれの間にも雇用関係は存在しない。
解説
この問題は、労働者派遣における三者間の関係(派遣元、派遣先、派遣労働者)を正しく理解しているかを問うものです。結論を出すための判断基準は、誰がその労働者を「雇い入れているか」という契約主体に着目することです。
雇用関係と指揮命令関係の違い
労働者派遣とは、派遣元事業主が自己の雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて派遣先のために労働に従事させることを指します。このとき、契約関係は以下の二種類に分かれます。
一つは「雇用契約」です。これは給与の支払い、社会保険の加入、雇用条件の明示などを行う関係です。これは派遣元企業と派遣労働者の間で結ばれます。
もう一つは「指揮命令関係」です。これは業務の具体的な指示を出す関係です。これは派遣先企業と派遣労働者の間で発生します。
試験で混同しやすいのが「誰が雇用主で、誰が指示を出すのか」という点です。今回の問題では「雇用関係」を問われているため、給与を支払い雇用契約を結んでいる派遣元が正解となります。
思考のプロセス
選択肢を検討する際、まずは「誰が給与を振り込んでいるか」を想像してください。派遣労働者に給与を支払うのは派遣会社(派遣元)です。したがって、派遣元との間に雇用関係があることが確定します。
次に、派遣先との関係を考えます。派遣先は業務の指示(指揮命令)は出しますが、直接雇用しているわけではありません。もし派遣先との間にも雇用関係があれば、二重雇用のような状態になってしまい、責任の所在が曖昧になります。そのため、法律上、派遣先との間には「指揮命令関係」のみが存在し、雇用関係は存在しないと整理するのが論理的です。
この構造を理解していれば、アからエの選択肢を見たときに、派遣元との雇用関係を正しく指摘している選択肢イのみが残ります。
実務や社会における重要性
この知識は、IT企業などで働く際にも非常に重要です。例えば、自分がシステムエンジニアとして客先常駐(派遣またはSES)をする際、あるいは自社に派遣スタッフを受け入れる際に、指示の出し方や契約上の立場を理解しておく必要があります。
特に、派遣先が派遣労働者に対して、採用や解雇、給与の決定など「雇用主としての権限」を勝手に行使することは、労働者派遣法で禁じられている「偽装請負」などの問題に発展するリスクがあります。IT現場において適切な契約形態を守ることは、法律上のコンプライアンスを維持するだけでなく、現場の円滑な運営のためにも必須の知識です。