令和8年度 ITパスポート試験 公開問題 問31 解説 リーン生産方式のムダ
リーン生産方式による業務改善の観点であるムリ,ムラ,ムダのうち,ムダに当 たるものとして,最も適切なものはどれか。
- ア 属人化していて,担当者によって作成物の品質が異なる作業
- イ 組織の能力以上に負荷をかける無理な計画や作業標準
- ウ 待機や必要以上の加工など,付加価値を生まない動作 ✓ 正答
- エ 長時間,身体の一部に負担がかかり,健康を害するおそれのある作業
解説
解き方の判断基準
この問題は、リーン生産方式における「3つの阻害要因」の定義を問うています。判断のポイントは「付加価値を生んでいるか」です。顧客にとって価値のない、単なる待ち時間や過剰な加工を「ムダ」と定義します。これ以外の選択肢は、生産のバラつきを意味する「ムラ」や、能力を超えた負荷を意味する「ムリ」に分類されるため、これらを識別できれば即座に正解が導けます。
リーン生産方式の3要素:ムリ・ムラ・ムダ
トヨタ生産方式で知られるリーン生産方式では、生産性を高めるために、現場の活動を以下の3つの要素に分類して排除または改善することを求めます。
- ムリ:能力を超えた負荷。過剰な作業量や非現実的な納期など、作業者の負担が大きく、結果として品質低下や疲労を招く状態。
- ムラ:作業のバラつき。属人化による担当者ごとのスキルの差や、仕事量に波がある状態。業務が安定せず、効率を低下させます。
- ムダ:付加価値を生まない動作。製品や成果物に直接的な価値を加えない活動です。具体的には「待機(仕掛品の積み上がり)」「運搬」「過剰な加工」「在庫」などが含まれます。
今回の問題の選択肢をこの定義に照らし合わせると、以下のようになります。
- ア(属人化による品質の差)は、作業が一定ではなくバラついているため「ムラ」に該当します。
- イ(能力以上の負荷)は、まさに「ムリ」そのものです。
- エ(身体的負担)も、作業者に過度な負荷がかかっているため「ムリ」の範疇に含まれます。
したがって、付加価値を生まない動作を指す「ムダ」として適切なのは、選択肢ウとなります。
なぜこの知識が重要なのか
ITパスポート試験でこの概念が問われるのは、IT開発やプロジェクトマネジメントにおいても「効率化」が非常に重要なテーマだからです。
例えば、システム開発現場における「ムダ」は、仕様の決まっていない作業の手戻りや、過剰なドキュメント作成、誰も使わない機能の実装などが該当します。また、特定の担当者しか作業できない状況(属人化=ムラ)は、その人が休むとプロジェクトが止まるというリスク(ムリ)を生み出します。
このように、リーン生産方式の考え方は工場だけでなく、現代のDX推進やアジャイル開発など、あらゆるビジネスプロセスの改善に直結しています。日頃の業務の中で「これは今すぐ必要か?」「誰かに偏っていないか?」と考える視点は、ITスペシャリストとして現場の生産性を最適化するために不可欠なスキルといえます。