第四級アマチュア無線技士 CBT試験問題例題(法規 No.1) 問8 解説 擬似空中線回路
電波法の規定により、無線局がなるべく擬似空中線回路を使用しなければならないのは、次のどの場合か。
- 1. 他の無線局の通信に妨害を与えるおそれがあるとき。
- 2. 工事設計書に記載した空中線を使用できないとき。
- 3. 無線設備の機器の試験又は調整を行うとき。 ✓ 正答
- 4. 物件に損傷を与えるおそれがあるとき。
解説
電波を発射せず、機器内部だけで高周波エネルギーを消費させる擬似空中線回路(ダミーロード)は、無線機の試験や調整を行うときに使用します。電波法第54条において、他の通信に混信を与えないよう、試験や調整時にはなるべく擬似空中線回路を使用することが義務付けられています。
電波を外に出さずにテストする仕組み
無線機から電波を送り出すとき、通常は空中線(アンテナ)を接続します。アンテナは高周波エネルギーを電波として空間に放射する役割を持っています。
しかし、無線機の送信機能が正常に動作しているか確認したり、出力を測定したりする試験や調整の段階で本物のアンテナをつないで電波を発射すると、周囲の無線局に不要な電波を撒き散らして混信を与える原因になります。
そこで使われるのが擬似空中線回路です。英語ではダミーロード(Dummy Load)と呼ばれます。これはアンテナと同じ電気的特性(一般的には50オームのインピーダンス)を持ちながら、高周波エネルギーを電波として空間に放射せず、すべて熱に変換して消費する抵抗器です。擬似空中線回路を無線機に接続すれば、送信ボタンを押しても電波が外部に飛び出さないため、周囲に迷惑をかけることなく安全に機器のテストを行うことができます。
選択肢から正解を絞り込むアプローチ
法律の条文(電波法第54条)では、他の無線局の運用に阻害を与えないための配慮が定められています。試験や調整は、実際に通信相手とやり取りをするわけではないため、電波を空間に放出する必要性がありません。したがって、試験又は調整を行うときが擬似空中線回路を使うべき場面になります。
他の選択肢についても考えてみます。
選択肢1の他の無線局の通信に妨害を与えるおそれがあるときは、試験や調整に限らず、通常の通信時でも送信を控えるか、周波数を変更するなどの措置をとるべき場面です。擬似空中線回路を使うということは通信を行わないということなので、そもそも通信を目的とする場面の対策としては不適切です。
選択肢2の工事設計書に記載した空中線を使用できないときは、無線局の変更申請などの手続きを行うべき状況であり、擬似空中線回路で代用して運用することはできません。
選択肢4の物件に損傷を与えるおそれがあるときは、アンテナの設置場所や耐風圧などの物理的な安全対策に関わる問題であり、擬似空中線回路の出番ではありません。
このように、純粋に機器の動作チェックを行う目的である選択肢3が正解であると判断できます。
電波のクリーンな利用を支えるアマチュア精神
この問題が出題される背景には、アマチュア無線家が自作や修理、調整を自分で行う資格と技術を持つという特性があります。
アマチュア無線は、市販の無線機を使うだけでなく、送信機を自作したり、古い機器をメンテナンスしたりすることが許されている数少ない無線ジャンルです。そのため、実際に電波を発射する前に、送信パワーが正しく出ているか、周波数がズレていないかなどを自分で測定・調整する機会が多くあります。
もしすべての無線家がテストのたびに本物のアンテナから電波を出して調整を行っていたら、限られた電波の帯域(バンド)はたちまち混信だらけになってしまいます。自分が楽しむ無線が他人の通信を妨害しないよう、見えないところでお作法を守るというアマチュア精神を具現化したものが、この擬似空中線回路の使用規定です。試験対策として暗記するだけでなく、開局した後に自分で機器をメンテナンスする際にも、必ず手元に用意しておくべき必須のツールであることを示している重要な設問です。