第三種電気主任技術者試験 / 令和4年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 / 各問題解説 / 問70
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令和4年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 問70 解説 問7 問7

問7 次の文章は,変圧器の結線方式に関する記述である。 変圧器の一次側,二次側の結線に $\text{Y}$ 結線及び $\Delta$ 結線を用いる方式は,結線の組合せにより四つのパターンがある。このうち, [ (ア) ] 結線はひずみ波の原因となる励磁電流の第 $3$ 高調波が環流し,吸収される効果が得られるが,一方で中性点の接地が必要となる場合は適さない。[ (イ) ] 結線は一次側,二次側とも中性点接地が可能という特徴を有する。[ (ウ) ] 結線及び [ (エ) ] 結線は第 $3$ 高調波の環流回路があり,一次側若しくは二次側の中性点接地が可能である。[ (ウ) ] 結線は昇圧用に, [ (エ) ] 結線は降圧用に用いられることが多い。 特別高圧系統では変圧器中性点を各種の方法で接地することから, [ (イ) ] 結線の変圧器が用いられるが,第 $3$ 高調波の環流の効果を得る狙いから [ (オ) ] 結線を用いた三次巻線を採用していることが多い。 上記の記述中の空白箇所(ア)~(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。ただし,(ア)~(エ)の左側は一次側,右側は二次側の結線を表す。

  1. (1) (ア) Y-Y / (イ) Δ-Δ / (ウ) Y-Δ / (エ) Δ-Y / (オ) Δ
  2. (2) (ア) Δ-Δ / (イ) Y-Y / (ウ) Δ-Y / (エ) Y-Δ / (オ) Δ ✓ 正答
  3. (3) (ア) Δ-Δ / (イ) Y-Y / (ウ) Y-Δ / (エ) Δ-Y / (オ) Δ
  4. (4) (ア) Y-Δ / (イ) Δ-Y / (ウ) Δ-Δ / (エ) Y-Y / (オ) Y
  5. (5) (ア) Δ-Δ / (イ) Y-Y / (ウ) Δ-Y / (エ) Y-Δ / (オ) Y

解説

変圧器の磁気飽和に起因する励磁電流の第3高調波をデルタ結線内で環流・吸収させる仕組みと、中性点接地を行うためのY結線がもつ特徴の組み合わせから、各空欄に入る結線方式は(ア)が Δ−Δ\Delta-\Delta 結線、(イ)が Y−Y\text{Y}-\text{Y} 結線、(ウ)が Δ−Y\Delta-\text{Y} 結線、(エ)が Y−Δ\text{Y}-\Delta 結線、(オ)が Δ\Delta 結線となり、正答は(2)になります。

第3高調波と結線方式の性質

変圧器の結線方式を理解する上で、鍵となるのが「励磁電流に含まれる第3高調波の挙動」と「中性点接地の可否」です。これらは変圧器の鉄心の性質や、回路の接続方法に深く関係しています。

磁気飽和現象と第3高調波の発生

変圧器の鉄心には、磁束を通りやすくする性質(透磁率)がありますが、磁束密度が一定以上に達するとそれ以上磁束が増えにくくなる「磁気飽和現象」が生じます。 変圧器の一次側に正弦波交流電圧を加えたとき、二次側にも歪みのない正弦波の誘起起電力を発生させるためには、鉄心を通る磁束が正弦波でなければなりません。しかし、鉄心の磁束と励磁電流は比例関係にないため、磁束を正弦波にするためには、励磁電流に歪みを含ませる必要があります。 この歪んだ励磁電流をフーリエ解析すると、基本波に対して3倍の周波数を持つ第3高調波が最も多く含まれていることが分かります。したがって、変圧器が正常に機能するためには、この第3高調波電流が流れる経路をどこかに確保しなければなりません。

デルタ(Δ\Delta)結線と第3高調波の環流

三相交流における第3高調波は、各相の位相差が 120∘×3=360∘120^\circ \times 3 = 360^\circ、すなわち 0∘0^\circ となり、すべての相で同じ向き(同相)に流れます。 変圧器の巻線をデルタ結線にすると、環状の閉回路が形成されます。同相である第3高調波電流は、このデルタ結線の内部をぐるぐると循環(環流)することができます。これにより、第3高調波電流はデルタ結線の内部に閉じ込められ、外部の送電線へ流出するのを防ぐことができます。その結果、系統の電圧や電流が歪むのを防ぐという優れた効果が得られます。ただし、デルタ結線には中性点が存在しないため、中性点接地を行うことができません。

スター(Y\text{Y})結線と中性点接地

スター結線は、3本の巻線の一端を1箇所にまとめて中性点を作ります。この中性点は、直接または抵抗を介して大地に接地(中性点接地)することが可能です。中性点接地を行うことで、送電系統の異常電圧の上昇を抑制したり、地絡事故時に保護継電器を確実に動作させたりすることができます。 しかし、Y\text{Y} 結線では、中性点が接地されていない場合、同相である第3高調波電流が流れる経路がありません。中性点に向かって3相から流れ込む電流の行き場がなくなるためです。経路がない場合、励磁電流に第3高調波が含まれなくなるため、今度は鉄心の磁束が歪み、各相の誘起起電力に大きな第3高調波電圧が発生してしまいます。これにより中性点の電位が変動し、絶縁破壊の原因となります。

変圧器結線における高調波対策と接地方式の決定

  1. (ア)における第3高調波対策と接地不可の条件から結線を特定する 励磁電流の第3高調波を環流・吸収できるのは、デルタ結線が回路内に存在する場合です。しかし、問題文には「中性点の接地が必要となる場合は適さない」とあるため、一次側・二次側の両方に中性点が存在しない結線、すなわち Δ−Δ\Delta-\Delta 結線が当てはまります。

  2. (イ)における両側中性点接地の要件から結線を特定する 「一次側、二次側とも中性点接地が可能」という記述から、一次側と二次側の両方に中性点が存在する結線でなければなりません。この条件を満たすのは、両側がスター結線である Y−Y\text{Y}-\text{Y} 結線のみです。

  3. (ウ)と(エ)の昇圧用・降圧用としての使い分けを整理する Y−Δ\text{Y}-\Delta 結線および Δ−Y\Delta-\text{Y} 結線は、一方にデルタ結線があるため第3高調波の環流回路が存在し、もう一方にスター結線があるため中性点接地も可能という非常にバランスの良い方式です。 このうち、発電所から送電網へ送り出す「昇圧用」には、高電圧側を Y\text{Y} 結線にして中性点接地を可能にし、低電圧(発電機)側を Δ\Delta 結線にする Δ−Y\Delta-\text{Y} 結線(ウ)が用いられます。高電圧側を Y\text{Y} 結線にすると、相電圧が線間電圧の 1/31/\sqrt{3} に下がるため、変圧器の絶縁設計が有利になるメリットもあります。 逆に、送電網から需要家側へ電圧を下げる「降圧用」には、高電圧(送電)側を Y\text{Y} 結線にして中性点接地を行い、低電圧(配電)側を Δ\Delta 結線にする Y−Δ\text{Y}-\Delta 結線(エ)が用いられます。

  4. 特別高圧系統での(イ)の欠点を補う(オ)の役割を決定する 特別高圧系統では、1線地絡時の健全相の電位上昇を抑えるなどの理由から、中性点を直接接地できる Y−Y\text{Y}-\text{Y} 結線(イ)が強く求められます。しかし、Y−Y\text{Y}-\text{Y} 結線だけでは第3高調波の通路がないため、起電力の歪みや電磁誘導障害が問題になります。 そこで、一次巻線(Y\text{Y} 結線)、二次巻線(Y\text{Y} 結線)とは別に、第3高調波を逃がすための三次巻線を設け、これを Δ\Delta 結線(オ)にして変圧器の内部で閉回路を作ります。これを Y−Y−Δ\text{Y}-\text{Y}-\Delta 三次巻線付変圧器と呼び、特別高圧系統で広く使用されています。

鉄心の中で発生する第3高調波の同相成分が、結線の作り出すループをどのように通り抜けていくのか、電流の流れる一本の道を思い描きながら回路図を眺めてみると、それぞれの結線が選ばれる理由がすっきりと見えてきます。

参考リンク

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