第三種電気主任技術者試験 / 令和4年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 / 各問題解説 / 問90
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令和4年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目 問90 解説 問9 問9

問9 問 9 交流三相 3 線式 1 回線の送電線路があり,受電端に遅れ力率角 $\theta\text{ [rad]}$ の負荷が接続されている。送電端の線間電圧を $V_{\text{s}}\text{ [V]}$,受電端の線間電圧を $V_{\text{r}}\text{ [V]}$,その間の相差角は $\delta\text{ [rad]}$ である。 受電端の負荷に供給されている三相有効電力 $\text{[W]}$ を表す式として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。 ただし,送電端と受電端の間における電線 1 線当たりの誘導性リアクタンスは $X\text{ [\Omega]}$ とし,線路の抵抗,静電容量は無視するものとする。

  1. (1) $\frac{V_{\text{s}}V_{\text{r}}}{X} \sin \delta$ ✓ 正答
  2. (2) $\frac{\sqrt{3}V_{\text{s}}V_{\text{r}}}{X} \cos \theta$
  3. (3) $\frac{\sqrt{3}V_{\text{s}}V_{\text{r}}}{X} \sin \delta$
  4. (4) $\frac{V_{\text{s}}V_{\text{r}}}{X} \cos \delta$
  5. (5) $\frac{V_{\text{s}}V_{\text{r}}}{X \sin \delta} \cos \theta$

解説

送電端線間電圧 VsV_{\text{s}} と受電端線間電圧 VrV_{\text{r}}、およびそれらの間の相差角 δ\delta を用い、線路抵抗を無視してリアクタンス XX のみとした一線当たりの等価回路から導かれる三相有効電力の式は、受電端の負荷力率角 θ\theta に依存せず相差角 δ\delta の正弦(サイン)に比例するため、正答は(1)の VsVrXsin⁡δ\frac{V_{\text{s}}V_{\text{r}}}{X} \sin \delta となります。

送電電力と相差角の関係

交流送電線路における送電電力(受電端に供給される有効電力)を考える際、送電線路の抵抗 RR がリアクタンス XX に比べて十分に小さい場合、線路の抵抗を無視してリアクタンス成分のみを考慮する簡易等価回路が広く用いられます。この簡易等価回路における有効電力の伝送特性を説明する上で重要となるのが、相差角と呼ばれる概念です。

相差角 δ\delta は、送電端の電圧ベクトル(フェーザ)と受電端の電圧ベクトルの間の位相差を表します。交流回路では、電力を送り出す側と受け取る側の電圧の大きさが同じであっても、位相が進んでいる方から遅れている方へと有効電力が流れる性質があります。

三相交流回路における1相(1線)当たりの等価回路を考えると、送電端の相電圧を EsE_{\text{s}}、受電端の相電圧を ErE_{\text{r}} としたとき、線路のリアクタンス XX を介して流れる電流 II は、両端の電圧の差(ベクトル差)をリアクタンス XX で割ったものになります。この関係をベクトル図(フェーザ図)で表すと、受電端の有効電力 PP は、受電端電圧 ErE_{\text{r}} と電流 II の同相成分の積として求まります。

ここで幾何学的な関係を用いることで、1相当たりの有効電力 P1\phiP_{\text{1\phi}} は次の式で表されます。

P1\phi=EsErXsin⁡δP_{\text{1\phi}} = \frac{E_{\text{s}} E_{\text{r}}}{X} \sin \delta

この式は、送電される有効電力が、送受電端の相電圧の積に比例し、リアクタンスに反比例し、そして相差角 δ\delta の正弦( sin⁡δ\sin \delta )に比例することを示しています。この関係式は、電力系統の安定度や潮流計算において非常に重要な基本法則であり、送電電力の公式(あるいは動的安定度の基本式)として知られています。

三相有効電力式の導出

1. 相電圧と線間電圧の関係の適用

三相交流における送電端および受電端の電圧は、一般に線間電圧で与えられます。設問で与えられている送電端線間電圧 VsV_{\text{s}} および受電端線間電圧 VrV_{\text{r}} を、1相当たりの相電圧 EsE_{\text{s}} および ErE_{\text{r}} に変換します。 スター結線(Y結線)の基準で考えると、線間電圧と相電圧の間には以下の関係があります。

Es=Vs3E_{\text{s}} = \frac{V_{\text{s}}}{\sqrt{3}}

Er=Vr3E_{\text{r}} = \frac{V_{\text{r}}}{\sqrt{3}}

2. 1相当たりの有効電力の計算

リアクタンス XX のみを考慮した1相当たりの有効電力 P1\phiP_{\text{1\phi}} は、前述の基本式に相電圧の値を代入することで求められます。

P1\phi=EsErXsin⁡δ=Vs3⋅Vr3Xsin⁡δP_{\text{1\phi}} = \frac{E_{\text{s}} E_{\text{r}}}{X} \sin \delta = \frac{\frac{V_{\text{s}}}{\sqrt{3}} \cdot \frac{V_{\text{r}}}{\sqrt{3}}}{X} \sin \delta

分母の 3×3\sqrt{3} \times \sqrt{3} を整理すると、1相当たりの有効電力は次のようになります。

P1\phi=VsVr3Xsin⁡δP_{\text{1\phi}} = \frac{V_{\text{s}} V_{\text{r}}}{3 X} \sin \delta

3. 三相全体の有効電力への変換

三相3線式全体で受電端に供給される三相有効電力 PP は、対称三相交流回路であるため、1相当たりの有効電力 P1\phiP_{\text{1\phi}} を3倍した値になります。

P=3×P1\phi=3×VsVr3Xsin⁡δP = 3 \times P_{\text{1\phi}} = 3 \times \frac{V_{\text{s}} V_{\text{r}}}{3 X} \sin \delta

分子と分母の 33 が約分されて消えるため、求める三相有効電力 PP は次の式にまとまります。

P=VsVrXsin⁡δP = \frac{V_{\text{s}} V_{\text{r}}}{X} \sin \delta

この結果から、選択肢の中に存在する負荷力率角 θ\theta を含む表現( cos⁡θ\cos \theta など)は、リアクタンスのみを考慮した送電電力の最終的な簡略式においては相差角 δ\delta の中にその影響が内包されるため、明示的な変数としては残らないことが分かります。

送電端と受電端の電圧ベクトルが描く幾何学的な関係と、その間を結ぶリアクタンスに流れる電流の位相差を重ねてみると、有効電力を決定づけるのは力率そのものではなく、両端の電圧が織りなす相差角の開き具合であることが見えてきます。

参考リンク

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