令和5年度第三種電気主任技術者下期試験 理論科目 問162 解説 問16(b) 問16
問16(b) 図のように, 電源E[V], 負荷抵抗R[Ω], 内部抵抗Rv[kΩ]の電圧計及び内部抵抗Ra[Ω]の電流計を接続した回路がある。この回路において, 電圧計及び電流計の指示値がそれぞれV1[V], I1[A]であるとき, 次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし, 電圧計と電流計の指示値の積を負荷抵抗R[Ω]の消費電力の測定値とする。今, 負荷抵抗R=320Ω, 電流計の内部抵抗Ra=4Ωが分かっている。この回路で得られた負荷抵抗R[Ω]の消費電力の測定値V1I1[W]に対して, R[Ω]の消費電力を真値とするとき, 誤差率の値[%]として, 最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
- 0.3
- 0.8
- 0.9
- 1.0
- 1.2 ✓ 正答
解説
図の回路において、電圧計が電流計と負荷抵抗の直列部分に対して並列に接続されているため、測定値となる指示値の積は負荷抵抗だけでなく電流計の内部抵抗における電力損失も含んでしまい、実際の負荷抵抗の消費電力である真値に対する誤差率が電流計の内部抵抗と負荷抵抗の比から1.25%と算出されるため、これに最も近い選択肢(5)の1.2が正答となります。
電圧電流計法における測定原理と誤差の要因
電気回路において抵抗の消費電力を間接的に測定する方法として、電圧計と電流計の指示値の積を用いる電圧電流計法があります。理想的な測定器では、電圧計の内部抵抗は無限大、電流計の内部抵抗はゼロであると仮定しますが、実際の測定器にはそれぞれ内部抵抗が存在するため、接続方法によって測定値に系統的な誤差が生じます。
この測定における誤差を定量的に評価するために用いられるのが、真値に対する測定値の偏りを示す誤差率の定義です。誤差率は以下の式で表されます。
誤差率 = (測定値 - 真値) / 真値 × 100 [%]
また、回路内の各部で消費される電力は、ジュールの法則(P = I^2 * R)によって規定されます。ジュールの法則は、抵抗に電流が流れたときに発生する熱エネルギー(電力損失)が、電流の2乗と抵抗値の積に比例することを示しています。本問の回路では、電圧計が電流計と負荷抵抗を合わせた全体を囲むように接続されているため、電流計の内部抵抗での電力損失がそのまま測定値に上乗せされる性質があります。
電流計の内部抵抗による電力測定の誤差計算
1. 電圧計の指示値の導出
図の回路において、電流計と負荷抵抗 R は直列に接続されています。この直列部分全体に対して電圧計が並列に接続されているため、電圧計の指示値 V1 は「電流計の内部抵抗 Ra による電圧降下」と「負荷抵抗 R による電圧降下」の和になります。電流計を流れる電流の指示値が I1 であるとき、オームの法則より、これら2つの抵抗の合成抵抗における全体の電圧降下は以下のように表されます。
V1 = I1 * (R + Ra) [V]
2. 測定値と真値の定式化
問題文より、消費電力の測定値 P_m は電圧計の指示値 V1 と電流計の指示値 I1 の積として定義されます。ここに上記で求めた V1 の式を代入します。
P_m = V1 * I1 = I1 * (R + Ra) * I1 = I1^2 * (R + Ra) [W]
一方で、本来求めたい負荷抵抗 R の消費電力の真値 P_t は、負荷抵抗 R に電流 I1 が流れることで発生する電力であるため、ジュールの法則より以下のようになります。
P_t = I1^2 * R [W]
3. 誤差率の計算と選択肢の判定
誤差率の定義式に、導出した P_m と P_t の式を代入して整理します。
誤差率 = ((P_m - P_t) / P_t) * 100 = ((I1^2 * (R + Ra) - I1^2 * R) / (I1^2 * R)) * 100 = (I1^2 * Ra / (I1^2 * R)) * 100 = (Ra / R) * 100 [%]
このように、分子と分母の I1^2 が約分されるため、測定を流れる電流の大きさに関わらず、誤差率は電流計の内部抵抗 Ra と負荷抵抗 R の比だけで決定されることが分かります。 ここに与えられた数値 R = 320Ω、Ra = 4Ω を代入します。
誤差率 = (4 / 320) * 100 = 0.0125 * 100 = 1.25 [%]
算出された誤差率は 1.25% となり、選択肢に示された値の中で最も近いものは 1.2 となります。
回路図に描かれた電圧計の接続位置と、電流計の内部抵抗を流れる電流の経路を重ねてみると、電圧計が何を測定しているのかがクリアに見えてきます。